世の中には分かっているつもりで、実は分かっていないということがたくさんある。 自分が見えているものが正しくて、他の人も同じように見えていると思っているのもその一つだろう。そういった、今まで当たり前だと思ってきたことが、実は違うかもしれないということに気づくのは大切なことだと思う。人間、いくつになっても分からないことが多いのだと自覚するのも大切だ。
たくさんの気づきをもらえる季刊誌
定期購読をしていて毎回楽しみにしている雑誌「コトノネ」は、2012年1月に創刊された障害者関連の季刊誌で、徐々に各地の書店で見かけるようになってきた。謳い文句のとおり、読むと楽しくて元気が出る情報がたくさん詰まった雑誌だ。
元々は、東日本大震災で被害を受けた障がい者及び支援施設の復興支援を目的として創刊され、被災地にある就労支援施設などの状況も随時掲載されている。最近ではA型事業所の実情や各地での雇用に関することなど、様々な情報が網羅されている。
コトノネグラビ
一芸一反百姓特集
木更津の楽園ぶっちゃけインタビュー11
作家・詩人 東田直樹古民家カフェを訪ねて
日々木の4年間のできごと[新連載]自然栽培パーティその1
「自然栽培の寅さん」が行く「脱福祉」から「超福祉」へ12
過疎地を先進地にする、古本屋の社長
尾野寛明(合同会社エコカレッジ代表)シリーズ 農と生きる障害者5
「利用者」も「支援者」もなく、いつまでも働き暮らしていける理想の「かたち」を探して
社会福祉法人なのはな村シリーズ 障害者の就労事例14
タクシー運転手の星
毎号、さまざまな情報や気づきをもらっている季刊誌だが、今回一番の記事ははなんといっても特集の東田直樹さんとのインタビューだろう。「跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること」など数多くの著書を発行している東田さんだが、ご本人は自閉症のため考えたことを表現するのが苦手だという障害特性を持つ方だ。
私はNHKの特集番組で東田さんのことを知ったが、世界数カ語に翻訳されている著書を持ち、日本だけではなく海外でも講演活動をされている方だけに貴重なインタビューだと言える。失礼な言い方になってしまうが、まだまだメジャーとは言えない「コトノネ」がインタビューしたというのは、本当にすごいことではないだろうか。
東田さんは紙に書いたお手製のキーボードを指で押し、それをきっかけとしてご自身が話をするという表現方法を用いている。インタビューもご本人が語られたとおりを掲載してあるので、読み手も臨場感を覚えるような内容となっている。
インタビュー内容はぜひ「コトノネ」を読んでいただきたいが、心を打つような、ハッとさせられるような内容が随所に出てきて興味深い。自閉症の方は突然立ち上がったり飛び跳ねたりする方が多いが、だからといって思考能力が劣るわけではない。東田さんが本を書かれたことで、まずはそういった誤解が解けているのではないだろうか。
他の記事も素晴らしいものばかりだが、まずは東田直樹さんの心にしみるインタビュー記事を読んでいただき、そのうえでさまざまな情報にも目を通していただきたい一冊だ。
「コトノネ」は写真にも注目して欲しい
私がこの雑誌に出会ったのは、新聞記事で紹介されたのがきっかけだった。今まで障害者関連雑誌というと自治体が作る冊子のようなイメージがあったが、表紙全面に笑顔の写真が配置されていてハッとしたのを覚えている。
さっそく取り寄せて購読してみたところ、登場する人々の笑顔がとにかく良いなと感じた。この雑誌は「人」を中心にした雑誌なんだなということが分かっただけではなく、「人」「笑顔」「ひたむきさ」「建設的」といった要素が満載の雑誌だった。
コトノネを読んで一番に感じたのは「写真が素晴らしい」ということ。技術的なこともさることながら、写っている人たちの表情がとても素敵だなと感じた。障害者メディアというととかくネガティブなイメージが先行しがちだが、コトノネの写真を見ていると自然に笑みがこぼれてくるような印象をうける。
こういった雑誌が書店に普通に並べられていて、買い物帰りの人がササッと買っていく。そういう世の中になると、いろいろな人がもう少し生きやすい世の中になるのではないだろうか。東田さんのインタビューを拝見して、そういうことも頭に浮かんだ。