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「幻想探偵社」(堀川アサコ)ちょっと不思議で心温まる物語

 暑くなると集中力が散漫になってしまい、ガクンと読書量が減ってしまう。涼しい部屋でノンビリ寝転がって好きな本を読むというのも楽しいが、暑さで疲れた体は文字を受け付けなくて眠くなってしまう。

 夏は読書には向かない季節かもしれないが、そんな季節にふさわしいシリーズ物が発行されていた。

幽霊専門の探偵社が舞台の物語  

幻想探偵社 (講談社文庫)

 

 堀川アサコさんが書かれた「幻想探偵社 (講談社文庫)」は、「幻想郵便局 (講談社文庫)」から続くシリーズ物の第4作目だ。今回は幽霊専門の探偵社が舞台の物語だが、怖くもなければ恐ろしくもなく、ほんわかとした心温まる物語だ。

 中学校の野球部でエースをつとめる海彦は、チームを夏季大会で準優勝に導いた真面目な性格の生徒。そんな海彦は父親のちょっとした一言でスランプに陥ってしまい、やむなく野球部を休部してしまう。

 周囲の理解を得られないまま、やるせない気持ちで街を歩く海彦の前に、同級生で密かに憧れていたユカリの生徒手帳が落ちていた。慌てて周囲を見渡すとユカリは古ぼけた雑居ビルに入っていくところで、慌てて追いかけた海彦は「たそがれ探偵社」という不思議な探偵社に紛れ込んでしまう。

 エレベーターで一緒になったヤンキー姿の大島は、よくよく見ると影がない幽霊。「たそがれ探偵社」は幽霊専門の探偵社で、幽霊の悩みや頼みを解決するための探偵社だったのだ。

 大島は海彦やユカリと同じ中学校の卒業生だったが、自分がどうして死んでしまったのかを忘れてしまった大島のために、海彦とユカリは中学校で起こった15年前の事件について調べ始める。その途中でも、様々な幽霊の頼みごとに遭遇し解決していくが、大島が死んでしまった謎に迫るにつれて、海彦とユカリにも徐々に危険が迫ってくる。

 幽霊が専門の探偵社という設定ながら、海彦とユカリ、探偵社の青木や幽霊の大島など、関連する人物同士のやりとりが心温まる内容になっている。また、物語が進む中で登場してくる街の人々との会話や交流もほんわかと優しく、スイスイと読んでいくことのできる物語だった。

 ちょっと不思議な設定ながら、登場するエピソードは心温まるものや心に響くものばかり。登場人物の設定も相まって、心温まる素敵な物語に仕上がっていた。

 暑い夏にすんなりと読める清涼感のある物語だと思う。

幻想探偵社 (講談社文庫)

幻想探偵社 (講談社文庫)

 

他のシリーズ作品も不思議で心温まる物語だ

 「幻想シリーズ」の第一作目は、小さな郵便局が舞台となった「幻想郵便局 (講談社文庫)」だ。今回の作品と同じく不思議な設定ながら、良い終わった時に心の中がふわっと温かくなる心温まる物語だ。

 シリーズ物というと、主人公が同一人物だったり設定が同じだったりするものもあるが、「幻想シリーズ」は設定も内容もそれぞれ全く別な物語として進んで行く。共通するところを「不思議な物語」という点だが、一作目の登場人物がさりげなく二作目に登場してきて楽しい。

 今回の物語にも第一作目の登場人物が出てくるが、物語の最後になってようやく一作目とのつながりがわかるようになっていた。そういったさりげなさも、このシリーズの雰囲気と合っていて良いなと思う。

 

幻想郵便局 (講談社文庫)

幻想郵便局 (講談社文庫)

 
幻想映画館 (講談社文庫)

幻想映画館 (講談社文庫)

 
幻想日記店 (講談社文庫)

幻想日記店 (講談社文庫)