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「サウスポー・キラー(水原秀策)」球界を舞台にした軽快ミステリー小説

 子どもの頃は野球選手になりたかった。それもジャイアンツの選手に限るという条件付きで、暗くなるまで近所の原っぱで友達と野球に明け暮れていた。しかしそれも小学校高学年までの話で、中学に入る頃には体格も技術も、とても野球選手にはなれないよなという現実に気づいたが、それでも野球は観るのもやるのも好きだった。

 昭和40年代の子どもたちにとっては野球選手は花形職業で、宇宙飛行士やパイロットとともになりたい職業のひとつだった。だからこそ、昭和40年代に起きたプロ野球の八百長試合というセンセーショナルな事件には、子どもながら心の底から憤慨したものだ。

球界を舞台にしたミステリー 

サウスポー・キラー (宝島社文庫)

 水原秀策さんが書かれた「サウスポー・キラー (宝島社文庫)」は、球界を舞台にした軽快なミステリー小説だ。2004年の「このミステリーがすごい!大賞」受賞作品なので、すでに読まれた方も多いのではないだろうか。

 私は発表後10年以上経ってから読むことになったが、年月の隔たりを全く感じさせない内容で一気に読みきってしまった。

 主人公の沢村は球界一の人気球団オリオールズの若手投手だが、アメリカ帰りで飄々とした一本気な性格が災いしてチームでは浮いた存在だった。それでも、自分にあったトレーニングを黙々とこなし、周囲からのプレッシャーをものともせずピッチングを続ける毎日だった。

 ところが、突然降ってわいたように沢村に八百長疑惑が湧き上がってくる。沢村の八百長を伝える怪文書に続いて、マンション前で待ち伏せしていた男に襲われた際の動画が配布され一気に八百長疑惑は高まっていく。

 一時は自宅謹慎など傷心な日々を送っていた沢村だったが、持ち前の一本気な性格を奮い起こして真相を解明するために奮闘する。様々な証言や状況分析などを行いながら調べ続ける沢村は徐々に真相に近づいていくが、行き着いた先には想像だにしなかった結末が待っていた。

 様々な伏線が張られつつも軽快に読み進めることのできるこの物語は、今まで読んだミステリー小説とは一線を画す内容で、さすがに受賞作だけのことはあるなと思わせてくれる一冊だった。

サウスポー・キラー (宝島社文庫)

サウスポー・キラー (宝島社文庫)

 

本に吸い寄せられることがある

 今回ご紹介した「サウスポー・キラー」は、出張時に持参していた文庫本を読み終わったので、たまたま立ち寄った駅の売店で何気なく書棚を見て買い求めたものだった。買い求めた本は2007年に文庫化された初版で、しかも今まで読んだことのなかった作家さんの本だったが迷うことなく買い求めた。

 本を読むのが好きでほぼ毎日書店の平台を覗いているが、時々こうやって本に吸い寄せられるように買い求めてしまうことがある。本好きの方は同じような経験をされているのではないだろうか。私の場合にはこうやって買った本は例外なく面白くて、それもまた面白いもんだなと思う。

 さらに、作者の水原秀策さんの出身県が私と同じで、年代もほぼ同じという偶然にも驚かされた。こういうことがあるから、本屋めぐりや売店での書棚に眼を通すことはやめられない。