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里山に泊まって自ら地元の歴史や文化を調査する「越後民族泊物館」(新潟県十日町市)

 全国各地にはその土地ならではの文化や伝承がある。箱物行政というやり方であればまずは立派な建物を造り、地元に伝わる資料などを並べるだろう。ところが、その土地を訪れた人が自ら調査し、文化や伝承を資料として残そうという珍しい取り組みがある。地方再生にもつながりそうな興味深い取り組みだ。

新潟県十日町市の「越後民俗泊物館」

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 東京から新幹線を使って2時間ちょっと。JR飯山線・ほくほく線の十日町駅から歩いて8分の場所にできるのが、地元の歴史や民族を知ることのできる「越後妻有民俗泊物館」という施設だ。

 ここには、地元で出土した縄文時代の土器や、地元ならではの塚についての調査資料などが展示される予定となっている。しかし、ここは「博物館」ではなく「泊物館」。展示物を見るのが主体の施設ではなく、十日町市を訪れた人が地元に宿泊し、そこで調査した資料を展示するという珍しい取り組みを行う場所だ。

 そのため開館しているのも9月中旬までと、期間限定の施設となっている。また、民族泊物館が入っている建物は今年完成する「十日町産業文化発信館 いこて」の中に設置される予定となっている。喫茶スペースやファーマーズマーケットなどもあるようなので、ノンビリと訪れるのにも良い施設になりそうだ。 

□越後妻有民俗博物館
所在地 新潟県十日町市本町5丁目39-6 十日町産業文化発信館 いこて2階
開館時間 10:00~17:30
入館料 大地の芸術祭作品鑑賞パスポート提示もしくは300円
※中学生以下は無料
開館日 2015年7月26日(日)~9月13日(日)(会期中無休)

訪れた人が研究員となり資料を作るという取り組み

 「越後民族泊物館」の面白いところは展示物ではなく、その調査方法や仕組みにある。そこには地域を活性化するための工夫も見え隠れして面白い。

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http://homestaymuseum.net/schedule/#yuyama

 研究員を希望する人は「みんぱく研究員」として事前登録を行い、民俗泊物館別館として登録されているお宅に民泊(ホームステイ)をする。民宿などに宿泊するのではなく、普通のお宅に一晩お世話になるという方式だ。

 宿泊したお宅で地元の文化や芸術、歴史的な価値のあると思われるものを見聞きしてレポートにまとめ、泊物館に展示するための資料を作る。午後5時頃に宿泊先に到着してからは、住んでいる方と一緒に食事をして話を聞くなど知り合いの家に泊まりにいくような感覚の取り組みだ。

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http://homestaymuseum.net/schedule/#yuyama

 宿泊先は茅葺き屋根の民家であったり普通の民家であったりと様々だが、地元の民家に宿泊して地元のことを調べるというのは非常に面白いなと感じた。宿泊料などを支払ったうえで自分で資料を作って提供するというのは不思議な感じがするが、旅行で訪れるのであればとても良い思い出になるに違いない。

 自分が作成した資料などが展示されるというのも、文章を書いたりするのが好きな方にとっては興味をひく取り組みなのかもしれない。

地方再生の新しい形になるのか

 「町おこし」や「村おこし」という、いわゆる地域おこしのスローガンを聞くようになって久しい。地域によっては立派な資料館を建てたりすることで観光客を呼び込む場所もあるし、様々なイベントを開催してアピールする場所もある。

 その中で、最近ではUターンやIターンの取り組みにも力が注がれており、「田舎暮らし」や「移住」に自治体も積極的に取り組んできている。そういった取り組みの中にあって、今回ご紹介した新潟県十日町市が行っている「民族泊物館」という取り組みはとても興味深い。

 その地域の普通の民家に宿泊してその地域の文化や歴史を調査するというのは、地域を深く知ることに繋がり愛着を持つようになるだろうと思う。どれだけの人が参加するかはまだまだ未知数だと思うが、こういった地道な取り組みを行うことも地域おこしにつながるだろう。

 移住先として人気のある山梨県や北海道の市区町村などでも、就農体験や宿泊してのイベントが行われているようだが、こういった「地元を知ってもらう取り組み」というのは地元の方々の協力がなくてはできないことだろう。

 地域おこしの元々の考えは、自治体に任せず住民自身が行動をおこすということ。そういう意味でも十日町市の取り組みは意義深いといえるのかもしれない。