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働くことの意味を知る小説/「リブート」(福田和代)

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  私が会社に勤務し始めた昭和50年代は、書類の作成はほとんどが手書きで行われており、文字が上手か下手かということがとても重要視されていた。ワープロが一般的になったのは昭和60年になろうかどうかという頃で、それでも会議資料は手書きが主流だった。

 大勢の前で発表する時には手書きでOHP用紙に文章やグラフを書き、会議資料は青焼きという印刷機械を使用していた。PCがビジネスの中心となるのはまだまだ先のことだ。

  それでも平成に入ってしばらくすると、様々な仕事がコンピュータ化されたりシステム化されるようになってきた。手書き処理を行っていた仕事をシステムに取り込むため、「コーディング」という作業をせっせとこなし、システム操作を覚えるために長期にわたって研修なども行われた。

 今ではデスクに置かれているPCで「文書作成」「プレゼン資料作成」「給与計算」「経理処理」など、ありとあらゆる業務が短時間で行うことができるようになってきた。便利といえば便利だが、システムエラーやマシンの不具合が発生するとほとんどのビジネスマンには手に負えない状況となる。

 仮に自分のデスク上のPCが一週間使えない状態になると、出勤するだけでも無駄だという状況になるのではないだろうか。それだけ現在の生活や仕事は、システムやネットワークというものに依存していて、それが良いかどうかということ以前に「無くなったら社会が崩壊する」というほどのインパクトのある存在となってしまった。

リブート! (双葉文庫)

  福田和代さんの書かれた「リブート」という小説は、そんな”現代社会になくてはならないシステム”を管理する現場が舞台となっている。題材となっているのは銀行の金融システム。突然の停電やシステム入れ替えなどで発生するシステムトラブルに対して、システムエンジニアたちが奮闘しトラブルに立ち向かうという物語だ。

 「リブート」とは制御不能となったコンピュータを再起動させることだが、単に電源を入れ直すことではないらしい。本書のあとがきを読んでみると、「サブシステムのプログラムをトラブルが発生したメインシステムに乗せ変えて再起動すること」らしい。

 つまり、リブートをかけたマシンは元々のマシンとは違うプログラムを搭載しており、極論でいえば全く違うマシンになってしまう。私はシステム系には強くないのでこの説明が妥当なのかどうかは分からないが、物語の中ではいろいろなことを「リブート」する場面が出てくる。

 それは、他者に対する考え方や育成方法であったり、自分自身に対する悩みだったりするのだが、システムトラブルを対処する中で絶妙に溶け込まされていると感じた。

 物語としては金融系システムの正常化を担う人々の、陰の努力を明確に表舞台に引っ張りだした作品だ。しかし、物語に登場する人物のマネジメント能力やコミュニケーション能力となどにフォーカスすると、実はビジネス本としても読める一冊だと思う。

 働くメンバーのモチベーションをどのようにして維持・向上させるのか、トラブルを未然に防ぐにはどのようなことが求められるのか、トラブル発生時にはリーダーはどのような行動をとるべきなのかなど、この物語から得るものは多い。

 働くことに悩んでいたり、リーダーやマネージャーという立場で悩んでいたりする場合には、何かを見つけることのできる指南書のような一面も持っていると思う。そんな悩みを持たれている方がいらっしゃれば、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。 

リブート! (双葉文庫)

リブート! (双葉文庫)

 

内容紹介

銀行の取引システムを陰で支える人間たちの奮闘を描く。統合を控えた銀行で深夜、システムトラブルが発生する。大事にはならなかったが、再びトラブルが起きる。しかも今回は、顧客の口座に誤振込みが発生。混乱する銀行窓口に、エンジニアたちは知恵を絞り立ち向かう! 毎日を懸命に生きるサラリーマンにエールを贈る、熱血ビジネス小説。

(Amazonから参照)