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読めば心ホンワカ「ぶたぶたの本屋さん」(矢崎存美)

 本を読むのが好きでたくさん読んでいるうちに、自然と好きな作家さんや好きなシリーズというものができてくる。逆に言うと、今まで読んだことの無い作家さんの本というのは、書評などでかなり評判になってきて初めて手に取ることが多い。

 逆に評判が高くなればなるほど、読む気が失せてしまうという天の邪鬼な性格も自分の中にある。だからこそ、今まで読んだことの無い作家さんの本というのは、ある意味では自分のカンに頼って賭けに出るような気分で買うこともある。ちょっと大げさかもしれないが。

 私が一番最初にハマったのが星新一さんのショートショートだった。中学生の頃だろうか。クラスの中に他の同級生よりもちょっと大人びた男子生徒が居て、 彼が休み時間に広げて読んでいたのが星新一さんの「気まぐれロボット」だった。

 こういう男子生徒というのはいつの時代にもいるものだが、それまで休み時間と言えば外を走り回るだけしか考えていなかった私には、ショートショートという聞き慣れない分野の本を読む彼の姿はカッコ良かった。

  カッコいいやつを見ると真似したくなるのも中学生の特徴で、私もさっそく町の小さな本屋さんで買い求めて読み始めた。読み始めたら、こんなに面白いジャンルが世の中あったのかと驚き、すっかり星新一さんのファンになってしまった。

 いまでもブログや新聞の書評で気になった本があると、書店でペラペラとめくって買い求める。そして、読んだ一冊が気に入ると、その作家さんの代表作を次々と読み込んでいくという癖がついている。そういう方は案外多いのではないだろうか。

  そういった「次々と読みたくなる一冊やシリーズに出会う」というのが、本好きの私にとっては一種の喜びとなっている。

ぶたぶたの本屋さん (光文社文庫)

  矢崎存美(やざき ありみ)さんの書き下ろし文庫「ぶたぶたの本屋さん 」は、「ぶたぶたシリーズ」と呼ばれる矢崎さんの代表的なシリーズだ。矢崎さんは1985年に星新一ショートショートコンテスト優秀賞を受賞し、1989年に作家デビューをした方。星新一ファンとしてはそれだけでもググッと引き寄せられる。

 「ぶたぶたシリーズ」の主人公は"ぬいぐるみの山崎ぶたぶた"。ピンク色のぶたのぬいぐるみなのに動くだけではなくて、歩いて、しゃべって、仕事をして、料理が上手な優しい中年男性だ。

 綺麗な奥さんと可愛い娘さん二人とで生活していて、奥さんと娘さんはぬいぐるみではなく普通の人間。そんな"ぶたぶたさん"と知り合った人々は、心に抱えていた悩みや悲しみが徐々に薄れていき、ぶたぶたさんと知り合ったことで幸せになっていくというストーリー展開が一貫している。

 ぬいぐるみが生きているという設定自体が奇抜なのだが、どうしてそうなったかということについては一切触れられておらず、「ぶたぶたさんは、ぶたぶたさんだから」というキッパリとした割り切りが良い。

 今回はぶたぶたさんがブックカフェのオーナーとして登場し、さらにコミュニティFMのパーソナリティとしても活躍している。その中で、いろいろな人がぶたぶたさんと出会い、それまで抱えていた悩みを徐々に解決してという内容だ。

 ひとつひとつの話はぶたぶたさんが中心ではなく、ぶたぶたさんが出会った人々がそれぞれ主人公として物語が展開していく。そういった短編が連なりながら、最後にはひとつの物語を形成しているという連作短編形式の一冊だ。

 今回も心温まる物語詰まった素敵な一冊だった。気軽にホッとできる、疲れた心に効くとびきりのサプリメントのような一冊。オススメの一冊だ。

ぶたぶたの本屋さん (光文社文庫)

ぶたぶたの本屋さん (光文社文庫)

 

内容(「BOOK」データベースより)

ブックス・カフェやまざきは、本が読めるカフェスペースが人気の、商店街の憩いのスポットだ。店主の山崎ぶたぶたは、コミュニティFMで毎週オススメの本を紹介している。その声に誘われて、今日も悩める男女が、運命の一冊を求めて店を訪れるのだが―。見た目はピンクのぬいぐるみ、中身は中年男性。おなじみのぶたぶたが活躍する、ハートウォーミングな物語。