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「私の家では何も起こらない」(恩田陸)

 好きな作家さんの本は時々無性に読みたくなることがありますが、そんな時に未読の作品に出会うととても嬉しくなってしまいます。今回もそんな嬉しい出会いのあった一冊でした。

■不思議な幽霊屋敷物語

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  今日ご紹介するのは恩田陸さんの「私の家では何も起こらない」という一冊。丘の上に立つ古びた洋館が舞台となった、連絡短編形式の怪談物語です。

小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。幽霊屋敷に魅了された人々の記憶が奏でる不穏な物語の数々。アップルパイが焼けるキッチンで殺しあった姉妹、床下の動かない少女の傍らで自殺した殺人鬼の美少年…。そして驚愕のラスト!ようこそ、恩田陸の幽霊屋敷へ。(「BOOK」データベースより)

 恩田陸さんの書かれる物語は独特の世界観で描かれた物が数多くあり、過去と現在と未来が入り交じった時空を超えた不思議な物語や、現実世界と非現実世界が入り交じった物語などがあります。

 それだけに、読む人によっては「ラストが何となく分からなかった」と感じる場合もあって、それが恩田陸さんに対する読者の印象を分ける部分ではないかと思います。(私は恩田陸さんの独特の世界観が大好きですが)

 今回ご紹介するこの一冊は会談雑誌『幽』に連載されていた連作短編。ひとつひとつの物語が巧妙に絡み合って、最後にはひとつの大きな流れとなって物語がエンディングを迎えます。

 素敵なラブストーリーも書かれる恩田陸さんの作品の中では、この物語はおぞましい内容が連なるタイプ。書評の中には「エレガントで怖い」という表現のものがありましたが、確かに言い得て妙だと思います。

 アップルパイが焼けるキッチンで殺しあった姉妹。近所からから攫ってきた子どもを閉じ込めていた料理女など、登場人物が実に恐ろしい。

 そんな「恐ろしい世界」を覗いてみたい方にはオススメの一冊です。

■昔は怪談話に本気で震えていた

 私が子どもの頃に過ごした九州の田舎町では、月のでない新月の夜には懐中電灯を持たないと歩けないぐらいの漆黒の闇が広がっていました。

 家の中に居ても遠くから野良犬の遠吠えが聞こえてきたり、家の中も裸電球のため暗がりの部分が出来たりと、「何か居る気配」が濃厚な空間がそこここに存在していました。

 だからこそ、昼間に怪談話なんかを読んだりすると、夜になって怖くて怖くて仕方がなくて、頭から布団をかぶって息を殺して丸くなっていたこともあります。

 子どもは想像力や空想力が強いからかもしれませんが、現代の子ども達はここまで「夜」というものを怖がらなくなっていて、それはやはり家の中も街も十分に明るいからではないでしょうか。

 「夜、口笛を吹くと蛇が出てくるよ」という言葉におびえていたのも昔の子どもだけ。今では「蛇が出てきても捕まえれば良いし」という言葉が返ってきそうです。昔は部屋の中にも暗がりがありましたので、そこに蛇が隠れていると思うだけで怖かったものです。

 街や家の中が明るくなったことと引き換えに、怖さを感じる感受性のようなものが無くなってきたのかなと感じています。