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〔P〕「キネマの神様」(原田マハ)

 とても素敵な物語と出会いました。今まで読もうと思いながらなかなか読めなかった一冊は、知らず知らずのうちに涙を流してしまった一冊でした。

■映画をめぐる家族の愛情物語

キネマの神様 (文春文庫)

 今日ご紹介するのは、原田マハさんの「キネマの神様 」という一冊。映画をめぐる心温まる感動の物語です。

(あらすじ)
 間もなく40才に手が届こうという独身女性の歩は、国内有数のデベロッパー(再開発企業)でシネコンを中心とした開発プロジェクトの課長を務めていた。しかし、社内での根拠の無い誹謗中傷によって閑職に追いやられることになった歩は、異動を機に17年間勤めた会社を退職することになった。一方で、退職すると同時にマンションの管理人をしていた父親が心筋梗塞で倒れたという知らせを受ける。倒れたことによって「趣味は映画鑑賞とギャンプル」という父親に多額の借金があることも判明した。
 父親の借金をどうやって返そうかと頭を悩ませていた歩だが、当の父親が老舗の映画雑誌『映友』に何気なく投稿したメールがきっかけで、『映友』の編集者として勤務することになる。そして、父親が書いていた映画の感想を綴った文書をブログとして発信することによって、歩だけではなくその周囲にいる人々をも巻き込んで事態が大きく動いて行く。ついには、父さん寸前だった『映友』を立て直すことが出来るかもしれないほど事態が好転して行くが、、、

 物語の序盤は、ギャンプル好きの父親のダメさ加減と、退職して途方に暮れる主人公の歩の苦労が描かれています。映画好きの父と同じく映画好きの娘。そして心配性で我慢強いながらも、娘には愚痴をこぼし続ける母親。そんな親子三人の微妙な関係が綴られています。

 ダメダメな父親を更生させようと母と娘は父親の年金を差し押さえ、昔から好きだった映画一辺倒にすることで活路を見出そうとします。ここから物語は一変して、歩の再就職先である雑誌『映友』編集部が中心となります。

 70年間映画を見続けてきた父親が何気なく送ったメールで歩の再就職が叶い、それどころか父親の書いた文章がブログとなり、日本中だけではなく世界中に発信されることになる。さらに、ローズ・バッドと名乗る謎の人物からの書き込みが始まることによって、物語は一気に佳境に入って行きます。

 この先はぜひ実際の書籍を手に取って、じっくりと読み進めてみてください。前半のノンビリとした雰囲気とは一転して、後半はあれよあれよと言う間に主人公を取り巻く環境が次々と替わり、「こうなると良いな」という読者の期待に違わず、いやそれ以上の展開が待ち構えています。

 まさに物語の中に出てきた「フィールド・オブ・ドリーム」のような、心温まる夢のような感動が胸の中に広がって行きました。

 特に物語の終盤は涙もろい方は要注意。私も知らず知らずのうちに涙が頬を伝っていて、慌てて手の甲で拭ったほどでした。かなりオススメの一冊ですよ。ぜひ。

キネマの神様 (文春文庫)

キネマの神様 (文春文庫)