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「今だけのあの子」(芦沢 央)

読書の楽しみ方は人それぞれだ。外国作品の翻訳物が好きな方もいれば、サスペンス物が好きな方もいる。また、新しい知識を得るために新書を読むのが好きな人もいれば、コミックエッセイで楽しみたいという人もいる。「読書」という言葉ひとつをとっても、その形態や楽しみ方は千差万別だ。

その中でもやはり「好きな小説を読んで楽しむ」という人がかなり多いだろう。私もその一人だ。小説とは言ってもジャンルが幅広くて多岐にわたっているので、例えば時代小説が好きという人もいれば推理小説が好きという人もいて、さらにはジャンルを問わず小説が好きだという人もいるだろう。

私は「ジャンルを問わず小説が好き」な部類だ。残酷なものや政治・宗教に関するもの以外は、時代小説からラブコメまで面白そうだなと感じたものは手あたり次第に読んでいる。そのため、「面白いと思ったけれども読んでみたらそうでもなかった」という物語もあれば、「何気なく買ったけど読んでみたらとても面白かった」という物語もある。

とにかく活字好きなので、手元に本がないと落ち着かない。だから書店に行って目についた綺麗なジャケットを見て本を選ぶこともある。いわゆるジャケ買いというやつだが、案外こういう第一印象で買った物語が思いがけず面白いということもある。

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芦沢央さんの書かれた 「今だけのあの子 (創元推理文庫)」も表紙の絵が綺麗な一冊だが、ジャケ買いしたわけではない。芦沢央さんの計算しつくされたような手法が好きで、事件物ではない作品はどのようなストーリー展開なのかに興味があって読んでみたかったのだ。

読んでみたらなるほど良く考えられたストーリー展開で、一気読みしてしまったぐらいテンポが良くて引き込まれる。この一冊は、「女の友情」をテーマとした5つの短編から構成されていてそれぞれの短編がつながっている連作短編という形態なのだが、読み進めていくうちに「あれっ?」と思うような何気ない仕掛けがなされている。そういった一つ一つの仕掛けがすごい。

一番の親友だと思っていた大学時代の友達。彼女が結婚をすることになったのに、仲間の中で自分だけ誘われない。どうしてなのか。様々な憶測を胸にしながら、呼ばれていない結婚式に出かけてみるとそこには思いがけない出会いが待っていた。(「届かない招待状」)。お絵かきの好きな幼稚園児の娘。有名な絵画教室に通わせているが、ひょんなことから同じ教室に通うやんちゃな男の子の家に行くことになってしまう。すぐに帰るつもりが少し長引いてしまったが、その間に娘の描いた絵がなくなるというトラブルに見舞われてしまう。しかし、思いがけない結末が待っていた。(「答えない子ども」)

収録作品は「届かない招待状」「帰らない理由」「答えない子ども」「願わない少女」「正しくない言葉」の5作品。どの短編もおもがけない結末を迎えるものの、読み終わった時に心の中がふわっと暖かくなるものばかりだった。オススメの一冊だ。 

今だけのあの子 (創元推理文庫)

今だけのあの子 (創元推理文庫)