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明治の頃の妖(あやかし)達「明治・金色キタン」(畠中恵)

今週のお題「読書の秋」

秋の夜長は読書が進む。今週から東京もかなり涼しくなってきたが、虫の音をかすかに聴きながら本を読むのは貴重な時間だ。以前から読みたいと思っていた単行本も秋の夜長用に買い、じっくりと読み進めることができた。

レトロな時代の妖達の物語

江戸時代から明治時代への転換は、日本の歴史のなかでもかなり変化が必要となった時代だ。鎖国が解かれて海外の文化が一気に流れ込んだ時代でもあり、時間の長さや使う暦など生活の拠り所も一気に変化した時代でもある。

私たちの多くは、歴史を学ぶなかで江戸時代と明治時代を分けて考えてしまう。武士が刀を腰にさして歩いていたのが江戸時代で、ガス灯が灯って洋装の人が歩いているのが明治時代という感じだ。

しかし、考えてみれば時間軸というのは飛び飛びではなく繋がっており、人々の暮らしも徐々に徐々に変わっていったのだろうと思う。振り返ってみて「ああ、あの時から変わったんだな」と思えるのが、時代の変わり目なのかもしれない。 

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改めてそんなことを考えさせられたのは、畠中恵さんの書かれた「明治・金色キタン」を読んだからだ。江戸時代から明治時代になってから20年ほど経った、東京銀座にある派出所を中心とした物語だ。

以前ご紹介させていただいた「明治・妖モダン 」の続編で、前作があまりに面白かったので文庫化が待ちきれずに単行本を買い求めた。

物語の舞台は明治21年の東京・銀座。時代に取り残されたような古い佇まいの交番に、物語の中心となる原田と滝の両巡査は勤務している。

交番に持ち込まれる不思議な事件や困り事に、安月給だと嘆きながらも熱く取り組む原田と滝。時には人とは思えない超人的な能力を発揮することもあり、妖(あやかし)じみた活躍をする。

二人の周囲にいる人々も、新聞記者や三味線にお師匠さん、牛鍋屋の主人など様々だが、彼ら彼女らにとも人とは思えない能力や行動がかいま見える。

ある時、原田と滝は政府の高官から近辺警護を頼まれるが、一緒に行った塔が倒れたり、仲間の一人が行方不明になったりと剣呑な出来事がつづく。そこには、明治維新の時に吹き荒れた廃仏毀釈て消えた寺と仏像、そして5人の僧侶のことが関連しているようだ。

ただの事件や事故だと思っていた出来事が、ひとつの村の祟りから始まっていることが徐々にわかってくるのだが。

前作では、明治の時代を生きる妖達の姿が、どこか飄々とした雰囲気のなかで描かれていた。ところが、今回は明治維新が巻き起こした様々な混乱が軸となり、人も妖もなく翻弄される人々の姿が描かれている。

大きな謎を読み解きながら、生きていくことの難しさや哀しさや、そして希望を感じさせてくれる一冊だった。

明治・金色キタン

明治・金色キタン