年に何回かまとまって休めるタイミングがある。会社員だからこその休みだが、ゴールデンウィークとお盆時期と年末年始の休みがその代表的なものだろう。その中でも、自分のために時間を使いやすいのはゴールデンウィークだろう。私も毎年長編を読み込むのを楽しみにしているが、シリーズ物を一気に読むのも良いかもしれない。
知能犯との対峙を描いた3部作
今回ご紹介するのは、相場英雄さんが書かれた「 ナンバー (双葉文庫)」「トラップ (双葉文庫)」「リバース (双葉文庫)」の3部作だ。警察モノをいくつも書かれている相場さんだが、その中でもこのシリーズは少し色合いが異なっている。
相場英雄さんの小説といえば、「みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎シリーズ」などの推理物や、「震える牛」のように社会派の殺人事件などを思い浮かべる。しかし、今回ご紹介する3部作は「知能犯との対峙」を描いた物語だ。
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁捜査二課。殺人などの凶悪事件を担当する捜査一課とは違い、横領や詐欺といった狡猾な知能犯と対峙する。その二課に所轄署から配属された西澤警部補は、独特の捜査方法や同僚をライバル視する捜査員に戸惑いながらも眼前の犯罪に立ち向かっていく。人はどんな時に人を騙し、裏切り、真実を隠蔽するのか。細かく作り上げられた事件と、人間の奥深い心理を圧倒的なリアリティーで描くこれまでにない警察小説。
警察小説といえば殺人事件などを追いかけるというイメージがあるが、最初に「ナンバー」を読んだ時にはあまりにもイメージした内容と違い驚いた。銀行口座の増減を緻密に追いかけていく様子は、通常の事務仕事の延長線上にあるような感覚で、まるで経理業務を見ているようだ。
また、同じ課でも係が違うと情報を一切流さず、それどころか同じ係でも上席の者しか事件の全容を知らないというのも意外だ。意外なことだらけなので、逆に興味が湧いてくるしワクワクする。
被疑者の行動を確認するための尾行も非常に繊細で、読んでいて思わず息を止めてしまいそうな感覚も覚えた。そして、綿密に調べ上げた銀行口座などのお金の流れと行動確認により、犯人を追い込んでいく様子は読んでいてググッと入り込んでしまう。
3部作ではそれぞれ追いかける事件は異なるものの、それを追う刑事たちの様子が連続していて読み応えがある。ゴールデンウィークでの一気読みにもオススメだ。
普通の刑事物とちょっと違う
今回ご紹介したシリーズは、「犯人が最初から分かっている」という点が他の刑事物とちょっと違う。
殺人事件などでは「現場等の様子から犯人を探す」という流れになるが、このシリーズでは「最初から分かっている犯人を追い詰める」という流れで描かれている。贈収賄などを追いかける捜査二課の事件ならではだろう。
その昔、テレビドラマで人気の高かった「刑事コロンボ」は殺人事件ながら最初に犯人が判明し、それをコロンボが追い詰めていくという手法でワクワクした。それと同じワクワク感を感じることのできるシリーズだ。