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文房具好きならぜひ読みたい「ツバキ文具店」(小川 糸)が本屋大賞にノミネート中!

文具好きならぜひ読んでいただきたいと思ってご紹介した書籍が、2017年本屋大賞にノミネートされている。毎年興味深い書籍がノミネートされる賞だが、自分がお勧めだとご紹介した本が出ているのは嬉しい限りだ。まだ読んでいらしゃらない方のために、2016年6月14日にアップした記事をリライトしてご紹介させていただきたい。 

文具店兼代筆屋が舞台の心温まる物語

「ツバキ文具店」の表紙

2017年本屋大賞にノミネートされた10冊の中に、小川糸さんの書かれた「 ツバキ文具店」という物語が入っている。鎌倉の山あいにある古い文具店が舞台の物語だが、読むと文房具に興味を持つ一冊だし、文房具好きなら、筆記具好きならぜひ読んでいただきたい物語だ。

物語は「代筆屋」という仕事も請け負っているという、一風変わった文具店の紹介から始まる。

 物語の主人公は、鎌倉の小高い山のふもとにある古い一軒家「ツバキ文具店」で暮らす20代の雨宮鳩子。 幼い頃から「ポッポちゃん」と呼ばれている彼女は、文具屋と代筆屋を兼ねるお店の主人だ。母親から幼くして離されたポッポちゃんは、文具屋の先代である祖母に育てられた。

 代筆屋の十一代目として幼い頃から文字を書くことを訓練されてきた彼女は、思春期を迎えて祖母とぶつかり、祖母が亡くなるまで家を離れて暮らしたり、外国で暮らしたりする生活を送っていた。しかし、祖母が亡くなったことをきっかけに鎌倉へ戻った彼女は、「ツバキ文具店」の主人として先代と同じく「代筆屋」としての仕事を行うようになる。

 「ツバキ文具店」に寄せられる代筆の依頼は、お悔やみあり、借金の断りあり、絶縁状ありと、単に年賀状の宛名書きだけではない「人の想い」を綴る仕事ばかりだった。一つ一つの依頼に真摯に取り組む鳩子は、依頼を通じて知らず知らずのうちに自分の心の成長と仕事に対する誇りを持つようになる。

 「手紙を書く」ということを通じて知り合った人々との交流が、温かくて時には切なくて、鳩子の心を徐々に亡くなった祖母の本当の気持ちに近づけていく。

この物語には様々な文具類が登場する。ガラスペンや年代物の万年筆などの筆記具をはじめとして、書くための紙も色々と登場してきて楽しい。文房具好きにはたまらない内容だ。

文房具にはいろいろなジャンルがあるが、その中でも筆記用具というのは個人的にも好きなジャンルだし奥が深いと思う。古代、人類が文字を発明し壁や岩に文字を彫り込み、その後羊皮紙やパピルスに文字を書き残すようになる過程で、様々な筆記用具が作り出されてきた。そう考えると、筆記用具の歴史は古いし奥が深いという感覚もあながち間違いではないだろう。

紙と万年筆

「ツバキ文具店」では依頼内容によって筆記用具を変え、用紙を変えて代筆を行う。一つ一つのことには意味があり、その意味を知ることも文房具好きには非常に興味深い。読み進めていくうちに物語に登場する筆記具や用紙を使いたくなるし、手紙を書いてみたくなる。

現代ではメールやSNSでの連絡が多いため手描き文字を書くことが少なくなったし、手紙すらパソコンソフトで書いてしまうことがある。確かに便利だが、心を込めるという意味では手描きに勝るものはないだろう。

そんなことも考えさせてくれるとともに、手紙にまつわる心温まるエピソードがふんだんに盛り込まれた素敵な一冊だった。

ツバキ文具店

ツバキ文具店

 

文章表現も素晴らしい

小川糸さんは食堂かたつむりつるかめ助産院など、心温まる物語を世の中に送り出している作家さんだ。物語の内容もさることながら文章表現の美しさも好きで、今回ご紹介させていただいた「ツバキ文具店」にも心に残る文章が随所に散りばめられていた。

「考えていると、海の方から風が流れてくる。前髪が、ワルツを踊った」

「しとしとと地面を濡らす雨音が、極上の子守唄になっていた」

「海の上に広がる星座は、なんだかいつもよりのびのびしていて、大きく見える」

「夜空の星たちと無言の会話を交わしていたら、」

これらはほんの一部だが、目から飛び込んできた文字が頭の中で風景となって広がって、心の中にふわっと広がっていくような感覚を覚える。読んでいて心地良い文章で綴られているというのも、小川糸さんの作品を読む楽しさのひとつだ。

こういった文章を書くというのは誰もができることではないが、好きな文章をたくさん頭の中に広げるという作業が読書の楽しさを倍増させてくれると思う。一行でも良いから、そんな素敵なフレーズを書けるようになってみたい。