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何気ない職場での日常が共感できる一冊、「とにかくうちに帰ります」(津村記久子)

「とにかくうちに帰ります」表紙

働いていると色々なことがある。当たり前のことだが、良いこともあれば悪いこともあり、ウキウキすることもあれば憂鬱になることもある。そんな職場での日常を描いた短編集が、津村記久子さんの書かれた「とにかくうちに帰ります (新潮文庫)」という一冊だ。

ページ数207ページと薄手の一冊だが、4つの連作短編と2つの個別短編とで構成されていて、なかなか読ませてくれる一冊だ。西加奈子さんの"あとがき"も含めて、短いながらも心に残る。

前半の4短編は「職場の作法」という括りの中での連作短編となっており、一つの職場に勤める4人がそれぞれ主人公となって物語が進んでいく。同じ職場なのに主人公が変わることによって視点も変わり、それによって他の短編の主人公のことも客観的に見ることができて面白い。

営業事務で無理難題を言ってくる社員を冷静にあしらう社員、自分の持ち物を勝手に持って行かれてイライラする社員など、 どこの職場にもあり得るイライラ感や不調和音などが独特のペーソスとともに描かれて飽きない。

たとえば冒頭の「ブラックボックス」という短編では、営業担当者の無理難題をにこやかに受け答えする女性事務員が登場する。彼女はにこやかに対応しながらも、自分なりの基準で優先順位をつけ、失礼な態度をとる社員の書類は躊躇なく後回しにする。それでいて、その対応には読んでいて清々しさすら覚えるというものだ。

その他の短編も日常の中で起こりうる出来事を軸にして、職場と家との関わりや温度差などを感じさせてくれる内容だった。

働くということは日常の一つだが、その中に当たり前のことながら悩みがあったり喜びがあったり人間関係があったりと様々だ。そういった当たり前のことが、当人にとっては事件だったり記憶に残る出来事だったりする。

現在働いている人には「そういうこともあるよな」と思わせてくれる一冊だし、これから働く若者にとっては「そういうことがあるんだな」と教えてくれる一冊だろう。

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

 

ペリカーノジュニア

お仕事小説だけに職場が舞台となっているが、それだけに物語の中で色々な事務用品が出てくる。その中でも、ズボラな中年社員が勝手に人の文房具を持って行ってしまうという話があり、持ってかれた文房具の一つとして登場するのがペリカーノジュニアという万年筆だ。

この万年筆はドイツ製で、子どもたちが万年筆の使い方を覚えるために作られた商品だが、小ぶりなことや価格も千円台前半ということもあって人気のある商品だ。価格の割には書きやすくて持ちやすいので、私も日常使いとして重宝している。

こういった自分が愛用している文房具が登場する物語を読むと、登場人物や作者に非常に親近感を覚えてしまう。そういう楽しみ方もできた一冊だった。 

ペリカン 万年筆 A ブルー ペリカーノJr 正規輸入品

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