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これから訪れる秋の夜長のために、文房具好きに贈る文房具が思わず欲しくなる物語3選

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思いがけず暑かった9月が過ぎて暦は10月になった。東京も朝夕は以前よりもかなり涼しくなり、虫の音を聴いていると秋が訪れていることが分かる。秋の夜長は読書に最適な時期だが、私と同じような文房具好きの人には「文房具が欲しくなる本」をオススメしたくなってしまう。

筆記具を買って文字を書きたくなってしまう物語

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最初にご紹介するのは、小川糸さんが書かれた「ツバキ文具店」という一冊だ。今年読んだ本の中でもとても印象深い一冊で、何回か良い直してみたぐらいだ。

物語の主人公は、鎌倉の小高い山のふもとにある古い一軒家「ツバキ文具店」で暮らす20代の雨宮鳩子。幼い頃に母親から離れて祖母に育てられた鳩子は、紆余曲折を経てこのお店で「代筆屋」を営んでいる。

「代筆屋」のツバキ文具店には様々な人が訪れて、自分では書くことのできない手紙の代筆を鳩子に託していく。その一つ一つに人間味あふれる物語が流れていて、手紙の素晴らしさや文字や文章の持つ力をふんわりとした素敵な文章で教えてくれる物語だ。

この物語には様々な筆記用具が登場し、用途によってこれだけ色々な種類の筆記用具があるんだなと驚かされる。万年筆やボールペンなどの筆記具だけではなく、羊皮紙や和紙などの用紙についても用途や雰囲気によって異なることを知ることができた。

文房具好きにとっては筆記用具の活用法を知ることのできる一冊だし、文房具好きでもそうでなくても、手紙を書いてみたくなるような一冊だ。

個人的には小川糸さんの情緒溢れる綺麗な文章が大好きなので、そういった点も含めてじっくりと読んでいただきたい一冊だ。

ツバキ文具店

ツバキ文具店

 

万年筆の魅力を知ることができる一冊

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次にご紹介するのは、雫井脩介さんが書かれた「 クローズド・ノート」という一冊。基本的にはふわっとした優しい雰囲気の恋愛小説だが、その中に推理小説の要素も入った物語だ。

主人公の香恵は皆から「天然」と呼ばれるフワッとした性格の女子大生。友人との関係にも満足していてアルバイトにもやりがいを感じているが、その反面何か物足りないものを感じていた。

そんな香恵が自室のクローゼットで見つけたのが、前の住人が忘れていったと思しき一冊のノート。ノートの持ち主は小学校の若い女性教師で、日々悩みながらも前向きな毎日を送っていた様子がうかがえる。そのノートを何気なく読んだ時から、ノートの持ち主に魅了されてしまう。

ストーリーの良さに加えて、登場人物の性格や考え方を丁寧に描いているところが、読み手を物語の中に引き込む一つの要素になっている一冊だ。

物語自体もとても素敵で心温まる内容なのだが、文房具好きから見ると万年筆の魅力がふんだんに盛り込まれた一冊でもある。

主人公の香恵がバイトをしているのが街の文房具店で、お店のご主人は万年筆にひとかたならぬ愛情を持った職人堅気の人。オリジナルの万年筆を作って販売するぐらい、万年筆にこだわりを持っている人物だ。

物語の序盤がこの文房具店の万年筆売り場で、次々と万年筆が紹介される場面を読んでいると万年筆の魅力を存分に感じる。物語の中でも万年筆はとても重要な意味を持っており、物語の最後の最後までこの文房具店で売られた万年筆が登場する。

私が万年筆好きになったのも、この物語を読んだのがきっかけだと言っても過言ではない。

クローズド・ノート (角川文庫)

クローズド・ノート (角川文庫)

 

印刷機の音やインクの香りを思い浮かべる一冊 

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最後にご紹介するのは、 ほしおさなえさんが書かれた「活版印刷三日月堂 星たちの栞」という一冊。暖かみのある活字で印刷される、活版印刷の良さを感じられる一冊だ。

舞台は埼玉県の川越市。「小江戸川越」と呼ばれるこの地域には、昔ながらの小さなお店が今でも元気にお店を開いている。また、最近ではお菓子横丁や時の鐘などが評判を呼んで、週末ともなると大勢の観光客で賑わう場所になっている。

この小江戸川越にある小さな活版印刷所「三日月堂」は、年老いた店主夫婦が亡くなってからというもの廃業して空き家になっていたが、廃業から5年が経って孫娘の弓子が活版印刷所を再開することになった。

一つ一つの活字を拾い、一枚一枚丁寧に作られていく印刷物。若くて寡黙な弓子が手作業で一つ一つの言葉を紡いで印刷する三日月堂には、様々な悩みを持った人々が訪れ、温かい印刷物に心を癒されていく。

活版印刷という方法で作られていく暖かみのある印刷物を通じて、「三日月堂」に集まってくる人々の喜びや哀しみが見事に表現された心温まる物語だ。物語に出てくる活版印刷の様子や活字の製造・流通方式など、活版印刷で作られた印刷物が好きな方にとっては、インキの香りまで感じてしまうほど素敵な内容となっている。

私も以前、「活版工房」が企画している体験会に参加したことがあるが、一文字一文字拾い上げて印刷を行うという行程はとても新鮮で楽しかった。また、活版印刷によってつくられる印刷物は活字がとても綺麗で、活字自体が主張しているような感覚にもとらわれたことを思いだす。

この本を読むと活版印刷で作られた文具類が欲しくなるとともに、自分でも何かを作ってみたくなるのではないだろうか。私も近いうちに特製の何かを作ってみたいと思っている。

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 星たちの栞 (ポプラ文庫)

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 星たちの栞 (ポプラ文庫)