筆記具を使うのは好きなのに、美しい文字を書くのは苦手だ。決してくせ字だったり汚い字だったりするのではないと思うが、文字のバランスも線の勢いも今ひとつ。最近、お気に入りの万年筆やボールペンも揃ってきたので、筆記具に敬意を表するためにも今さらながらペン字練習を始めてみた。
直接書き込むペン字練習帳
昔から通信教育講座でペン習字というものがあったが、まずは市販のペン字練習帳に取り掛かってみることにした。大型書店に行ってあれこれと練習帳を見てみたが、その中でもお手本の字がとても素敵だなと感じた「30日でくせ字がきれいになおる ペン字練習帳 (TJMOOK)」を選んだ。
他にも色々な種類のペン字練習帳が発行されているし、万年筆用の練習帳なども棚に並んでいて選ぶのに迷うぐらいだ。やはり、最後の決め手は「こういう字を書きたい」と思えるようなお手本が並んでいるという点だろう。
家で練習をするのもなんだか気が引けたので、朝少しだけ早く家を出て会社近くのカフェでコツコツと練習を始めた。いちにち見開き1ページという仕様なので、ゆっくり書いても15分ほどで終わるのが良い。
1日目の課題は「線を書いてみよう」というもだったので「なんだ簡単じゃないか」と思ったが、いざ描き始めると意外や意外で線をまっすぐに書くことができない。背筋を伸ばしてきちんと紙を押さえて、それでもなんだか勢いのない線になってしまう。
うん、これはなかなか手強い。
二日目からはひらがなの練習。「く」「し」「そ」など、一画で書くひらがなが並んでいて、お手本の一文字にはワンポイントレッスンも書かれている。一文字ずつはそれほどたくさん書くわけではないが、丁寧に書いていくと数文字書いただけで十分練習になるなと感じた。
これから二画文字を練習したり漢字を練習したり、さらには手紙の一文を練習したりというメニューが続く。お手本を見ながらではあるが、自分が書いた字が今までよりも綺麗になっていくのも気分が良い。
単に文字を綺麗に書くというだけではなく、精神衛生上もとても良いということに気づき始めた。これなら楽しくて毎日続けられそうだ。
30日でくせ字がきれいになおる ペン字練習帳 (TJMOOK)
- 作者: 中塚翠涛
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2011/12/05
- メディア: 大型本
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文字を綺麗に書きたくなったのは一冊の本との出会いがきっかけだった
ペン字練習をしてみようかなと思ったのには訳がある。それは、以前読んだ小説の影響だ。良くも悪くも書籍から影響を受けやすいのだが、小川糸さんの書かれた「ツバキ文具店」には非常に心を動かされた。
この物語は鎌倉の山あいにある一件の文具店が舞台の物語で、さまざまな筆記具が登場するだけではなく、「代筆」という作業を通じて人々との交流が描かれている。物語自体も素敵なのだが、ところどころに挿入されている肉筆の手紙の字がどれも素晴らしい。
せっかくお気に入りの筆記具を持っているのだから、素敵な字をスラスラと書けるようになってみたい。そんな思い付きで始めたのがペン字練習だ。
さて、30日で今よりももう少しまともな字になって、自分でも「なかなか良いな」と思えるような文字になっているのだろうか。今から30日後の自分が楽しみだ。
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文字を丁寧に書いていると心が静かになる
今回ペン字練習をすることで、改めて気づいたことがある。それは、文字をしっかり、ゆっくり書くことで、気持ちが静かになってくるということだ。
文字のハネを意識したり丸みを持たせることを意識したりすることで、書くという行為に意識が集中して気持ちが和んでくるのが分かる。写経をすると気持ちが穏やかになるというが、文字を集中して書くということには心を静める効果があるようだ。
これは文字を書くことに限ったことではなく、陶芸や裁縫などでも同じ事を感じることがある。何かに集中すると雑念がなくなり、心の平穏を覚えるのではないだろうか。
文字を正しく美しく書こうとする行為は、自分の心も正しく美しくしてくれるのかもしれない。そういう意味では、一日の終わりにペン字練習をしてみると、布団に入ってからの寝付きも良くなるかなと思っている。一度試してみることにしよう。