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ファンタジックで感動的な一冊「そこへ届くのは僕たちの声」(小路幸也)

今週のお題「ゴールデンウィーク2016」

 今年のゴールデンウィークは遠出をするでもなく、「部屋の片付け」と「ゆっくりと本を読む」というふたつのお題を自分に課した。「部屋の片付け」は不要な書類を山ほどシュレーダーにかけ、棚の整理をするにとどまった。綺麗に整理するのにはもう少し時間がかかりそうだ。

 「ゆっくりと本を読む」ということに関しては、10日間で7冊読むことができたのでまずまずだろうと思う。元々本好きなので苦もなくできたが、その中でも一晩で一気読みしてしまった一冊があった。

子たちが主人公のファンタジックで感動的な一冊

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 冒頭からグイグイと引き込まれて一気読みしてしまったのが、小路達也さんの「そこへ届くのは僕たちの声 (文春文庫)」という一冊だ。

 中学生のかほりは2年前の震災で不思議な「声」に助けられる経験をしていた。ちまたで植物状態の人間を覚醒させる能力の存在が噂になるのと同じ頃、連続誘拐事件が発生。元刑事、ライターらが謎を追ううちに「ハヤブサ」なる存在が浮かび上がり…。すべての謎が明らかになったとき、起こる奇跡に涙する感動の青春小説。
「Booksデータベース」より

 物語は街外れにある施設天文台を中心に展開するが、そこに集まる人々が目に見えない不思議な糸で手繰り寄せられるようにつながっていく。交通事故で母が一時的に植物人間になったリン、大地震で母親を亡くし父親が植物人間になってしまったかほり、そして二人の周囲にいる友人や大人達。それぞれが体験したことや追いかけていたものが、「ハヤブサ」という名前で結びついていくことにワクワクしてしまう。

 かほりが以前から体験していた「そらこえ」や、リンが体験している「遠耳」とはなんなのか。不思議な能力と不思議な出来事が徐々に形を成してきた時に、世の中を揺るがす大きな事件に皆が巻き込まれていく。

 SFのようなファンタジーのような不思議な物語だが、そういった話が好きな方にとっては一気読み必須の一冊だろう。作者の小路さんは人の優しさを紡ぐことの上手な方だという印象があるが、この物語でも登場人物全てが魅力的で優しい人々だった。そういった優しさを感じながら読むことで、読み手の心も自然と優しくなってくるのかもしれない。

 章ごとに登場人物がそれぞれ一人称で物語を進めていくという手法も、全員が主人公という感じがして良い。読み終わった時に爽快感と感動を覚えた一冊だった。

そこへ届くのは僕たちの声 (文春文庫)

そこへ届くのは僕たちの声 (文春文庫)

 

子どもの頃は特別な能力に憧れた

 子どもの頃は特別な能力というものに憧れる時期があった。スプーン曲げの超能力者がテレビで話題になると、家のスプーンを指でこすりながら「曲がれ」と念じた人は多かったのではないだろう。私もその一人だ。

 それ以外にも、例えば念力でモノが動かせないかとか、トランプを裏側からジーっと見つめて透視ができないかとか、割と真剣に考えていたような気がする。子どもの頃は「特別なこと」に憧れるのかもしれない。今回ご紹介した物語は、そういった昔の感覚を思い出させてくれた。

 人生も半世紀を過ぎると、逆に「平凡なこと」のほうが難しいのだということに気づくようになった。何をもって「平凡」だというのかは定義が難しいが、何事もなく毎日を過ごすというのは思った以上に難しい。

 自然災害や交通事故などの他責の出来事もあるだろうし、自分自身が原因で困ったことになる自責の出来事もあるだろう。そういう時にどうすれば良いかという知恵は思い浮かばないが、特別なことを求めず自分なりに精一杯毎日を生きることがまずは必要なんだろうなと思う。

 平凡なことが実は特別なことなんだということを、少しだけ意識してみると良いのかもしれない。