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文庫化されて嬉しい!疲れた心にじんわりと効く「ストーリー・セラー」(有川 浩)

 本を読むのが大好きになったのは、小学校4年生の頃からだろうか。それまでも本好きの父親の影響でいろいろな本は読んでいたが、中心となっていたのは漫画本ばかりで、漫画を読んで文字を覚えたと言っても過言ではないぐらい漫画大好き少年だった。自分で買うお金がないので、当時は田舎町にもあった貸本屋で漫画を借りては読んでいた。

 それが一転して本を読むようになったのは、図書館で何気なく手に取った堀江謙一さんの「太平洋ひとりぼっち」に出会ってからだ。昭和40年代の小学生にとっては、太平洋を小さなヨットで単独横断するというのは、小説の冒険物以上にワクワクドキドキする内容だった。

 それからは、読み終わってはしばらくしてまた借りて、戻してはまた借りてという具合に、同じ本を何回も何回も読み返した。図書館に置いてあった「太平洋ひとりぼっち」の背表紙に取り付けられた貸出カードには、私の名前が何回も登場したのを覚えている。当時読んだ初版に掲載されていた白黒写真のことも、表紙の手触りや本のにおいなども、今でも鮮明に思い出すことができる。

 それだけ、お気に入りの本というのは何回読んでも楽しいし、読み返すことで新たな感動を呼び起こしてくれるものだと思う。

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 昨年末にはたくさんの書籍が文庫化されたが、そのなかでも有川浩さんの「ストーリー・セラー (幻冬舎文庫)」は文庫化されて思わず買い求めた一冊だ。以前、単行本を読んでとても感激したが、今回の文庫化で再度読み返す機会を得ることができた。

 本書は、女流小説家を妻に持つ夫が主人公の「side:A」と、女流小説家自身が主人公の「side:B」の2話構成になっている。それぞれ別々の物語なのだが、どちらも感動的な話だ。

■side:A

 デザイン会社に勤める彼は、 アシスタントとして黙々と働く彼女の意外な才能を知る。 その才能とは小説を書くこと。 本を読むことが大好きな彼は「読み手」として彼女の小説に惹き込まれて行く。

 やがて彼の助けも有ってその才能を開花させた彼女は彼と結婚し、大好きな小説に打ち込める幸せな日々を過ごすようになる。しかし、幸せと引き換えに訪れた不幸はあまりにも大きなものだった。

■side:B

 会社の事務職として可もなく不可もなく仕事をこなしていた彼女は、事務員としての仕事以外に小説家としての一面も持っていた。

 彼女が勤める会社に皆に一目置かれている営業の男性がいたが、 ふとしたことでその彼が彼女の小説の大ファンだということを知る。優しく優秀ながらも他人には決して本心を出さない彼。小説家としての彼女の才能を固く信じる彼と結婚し、その才能を今まで以上に発揮して幸せな日々を過ごして行く。しかし、その幸せは永遠に続く幸せでは無かった。 

 「side:A」も「side:B」もどちらも感動的だが、感動をさらに深めるためには「side:A」を読み終わってからしばらく本を閉じ、できれば一日置いてから「side:B」を読み始めた方が良いかもしれない。両方の話は連続しているのだが、連続しているだけに「side:A」の感動を一旦心の中で噛み締めて、それから「side:B」の新たな感動を得た方が良いと思う。

 さらに、どちらもラストの数ページがものすごい迫力で読み手に迫ってくる。文字の羅列である小説が、ここまで迫力のある視覚言語として表現されていることに驚きを隠せない。

 有川浩さんといえば「図書館戦争」や「塩の街」、「阪急電車」や「レインツリーの国」など胸に響く物語も書かれる方。 私の大好きな作家さんの一人だが、今回この本を再読して切なくも美しい愛情に再び熱く心を打たれた。

ストーリー・セラー (幻冬舎文庫)

ストーリー・セラー (幻冬舎文庫)