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おやこでポレポレ《文房具好きブログ》

大好きな文房具や書籍、日常のことなどを更新中です!

「奇跡の人」(原田マハ)真の愛情とは無条件に与えられるものだと知った

 子どもの頃は親や先生から「自伝を読むように」といわれて育った。もともと本好きだったので、べーブルースやエジソン、ライト兄弟など歴史的に有名な人物の自伝を数多く読んだ。小学校の図書館に置いてある自伝は、そのほとんどを読んだのではないだろうか。

 大人になると、本田宗一郎さんや松下幸之助さんなど、ビジネス書としての自伝を読む機会が増えた。実在の人物の一生というのは、ノンフィクションなだけに胸に迫るものがある。

日本版ヘレンケラー「奇跡の人」

奇跡の人 The Miracle Worker

 原田マハさんが書かれた「奇跡の人」は、三重苦として知られるヘレンケラーの物語を日本バージョンとして書かれた物語だ。日本語バージョンとはいえ読者を飽きさせない人物設定やストーリー展開は、さすがに原田マハさんだなと唸らされた。

 物語の時代は明治のはじめ。旧幕臣の娘である去場安(あん)は、幼い頃から弱視という障害がありながらも、時代を先読みしていた父の意向によりわずか7歳で岩倉使節団の留学生として渡米する。

 日本人であること、女性であること、弱視であることの苦難にも負けず、安はアメリカでしっかりとした教育を受けて成人後に帰国する。

 安は日本にも女子教育を広めたいという情熱を持って帰国したが、日本ではまだまだ女性に対する教育差別があり苦悩する。そんな時に伊藤博文から、「目が見えず、耳も聞こえず口も利けない少女」の教育係になってもらえないかという手紙届く。

 青森県弘前に住んでいる少女の元へ情熱を持って安は出向くが、そこで待っていたのは「けものの子」と呼ばれ、座しき牢に閉じこめられた生活を強いられていた介良れんという少女だった。

 過酷な境遇の中で生きてきたれんに対して、安は自分の持っている知識と情熱で、文字通り身体を張った教育を開始する。そこには幾多の苦難と障害が立ちはだかり、幾度となく安は窮地に立たされる。

 しかし、れんは元々聡明な頭脳を持っており、徐々にだが安の指導によって人間らしい生活を取り戻していく。二転三転する安とれんとの壮絶なやりとりは、やがてタキという盲目の少女をも巻き込んでひとつの方向に進んでいく。

 長編小説ながら一気に読み終えてしまうぐらい、グイグイと引き込まれてしまうこの物語。読後に爽やかな感動と、人生に対する前向きな気持ちを心に呼び起こしてくれる一冊だった。

奇跡の人 The Miracle Worker

奇跡の人 The Miracle Worker

 

 決して目を背けてはいけない

 ヘレンケラーの物語は子どもの頃に読んでいたが、冒頭部分からぐいぐいと引き込まれるストーリー展開に夢中になって読み進めていけるのは、やはり著者の文章力とストーリー展開の巧みさにあるのだろう。

 結果がある程度わかっているのに、読みながら常にハラハラしている自分がいた。舞台を日本に置き換えたというのも凄いことだし、時代設定を明治の初期にしたというのもすばらしいと感じた。

 原田マハさんの書かれる物語には、苦難を前にしても決して逃げない女性が主人公として登場する。今回も弱視でやがて視力を失うであろう女性が登場し、それが一層物語に深みを与えている。

 また、終盤に登場する盲目の少女タキの存在も見逃せない。視力を失いつつある一人の女性と、すでに見ることができなくなってしまった二人の少女。そういった設定にも関わらず、物語には一片の悲しさも暗さもないというところも著者ならではだろう。

 えてして「障害者」という言葉を全面に出した物語というと、読み手の同情を買うような内容ではないかと思ってしまう。しかし、そこから目を背けずにまっすぐに突き詰めた物語だけに、読み手に本物の感動を与えるのではないだろうか。

 この物語から「決して障害から目を背けてはいけない」ということを、感動とともに与えてもらったのだと感じた。