「ありがとう」という言葉はとても良い言葉だと思う。語源を調べてみると「有り難し(ありがたし)」という言葉がもとになっていて、本来は「めったにない」とか「珍しくて貴重だ」という意味らしい。
心を込めて感謝の気持ちを伝えるのにふさわしい言葉だが、さらに3文字付け加えるだけで感謝の気持ちが何倍にもなるんだなと感じた出来事があった。
■カフェと売店での出来事
コーヒー好きなので時間があれば出勤前にカフェに立ち寄っているが、何回か訪れたときに「いつもありがとうございます」という言葉をかけられた。「いつも」という言葉を付け加えてもらうだけで「覚えてくれているんだな」という気持ちになるし、今日だけではなく以前からのことに対してもお礼を言ってもらえているんだなという気持ちになった。
また、ほぼ毎朝自宅の最寄り駅にある売店で新聞を買っているが、そこでも売店の方が「いつもありがとうございます」とか「まいどどうも」という声をかけてくれる。毎日ほんの一分にも満たない会話だが、自分を覚えてもらっているという感覚があって朝からとても気分が良い。
新聞にしてもコーヒーにしてもどこで買ったり飲んだりしても値段は変わらないが、「いつも」買っているということでこういった触れ合いがあると、どうせならこのお店に行きたいという気持ちにさせてくれる。
「いつも」とか「まいど」というほんの3文字の言葉だが、気持ちを伝えるうえではとても意味深い言葉だと思う。
■家族にも仲間にも使いたい
考えてみると家庭でも職場でも自分以外の人に助けてもらうという場面は多い。そんなときに皆さんは「ありがとう」という言葉を使っているだろうか。
いろいろな人に聞いてみると、家族や後輩などには素直にお礼を言うという人が案外少ないのに驚く。特に家族に対してきちんとお礼を言えていると認識している人は少ないようだ。
家でご飯が出てきたら「ありがとう」とお礼を言い、食べ終わったら「ごちそうさま」という。子どもがお茶を持ってきてくれたりテレビのチャンネルを変えてくれたりしたら「ありがとう」という。さらに毎日のことなら「いつもありがとう」と言ってみる。それだけで家族の会話は格段に増えると思う。
私は息子が何かしてくれたら「ありがとうね。助かるよ」とお礼を言い、妻が食事を出してくれたら「毎日ありがとう」と言うようにしている。それが毎日になると逆に家族からも「いつもありがとう」と言われる機会が増えてくるので、まさに自分の行動や言動は鏡のように自分に返ってくるんだなと感じている。
■「美味しい」と伝えることは心を育てる
「いつもありがとう」という言葉で思い出したのが、毎回楽しみにしているみやざき中央新聞の社説。心に染みる良い話ばかりが載っている新聞だが、某大手のサービス業を営む会社では新入社員に「お母さんのご飯を食べたら‟美味しかった”と言うように」という指導をしているという記事だった。
これは「身近な人に感謝の気持ちを伝えられない人は、お客様にも感謝の気持ちを持てない」ということから始まった取り組みのようだ。美味しかったと言われたお母さんからは「ただ単に家族が食べているだけの場だったのに、美味しかったといわれることで食事の時間が〝団欒(だんらん)”になった」という意見が寄せられたようだ。
さきほどの「いつもありがとう」というお礼も同様だが、言葉というのは言霊ともいい、放った途端に魂をもって相手に飛んでいくものだと思う。
「いつもありがとう」も「美味しかったよ」も、単なる音声としての言葉として届くだけではなく、相手の心に届く大切な魂の響きだということを常に意識しておきたい。