昔はどの町にもどの駅の近くにも文房具屋さんがあって、 学校帰りに消しゴムやノートを買いに行っていた。 現在ではショッピングモールや大型書店にも文房具が置いてあるため、 価格的な面も含めて町の文房具屋さんに行く事が少なくなった。そんなことを考えていたら、先日読んだ新聞に「昭和の文房具を売るお店」のことが掲載されていた。
■レトロな文房具が並ぶ住宅街の文具店
昭和テイストのレトロな文房具が並ぶのは東京・武蔵小金井にある「中村文具店」というお店。 JR武蔵小金井駅から歩いて10分程の住宅街にあるお店で、 戦前のノートやセルロイド製の筆箱など昭和の文房具が置かれている文具店だ。
60年以上前から駅前に店舗を構えていた文具店だったが、2010年に道路拡張に伴って取り壊しを余儀なくされ一旦は閉店。しかし、倉庫に残っていたレトロな文房具を見せて欲しいという方が現れ、結局は自宅を改築して営業を再開した。
平日は会社や学校に事務用品を配達しながら古い文房具を探して仕入れ、土日にはレトロな古文具を販売するというスタイル。かなり遠方からも文房具マニアの方が訪れるなど、 昭和の香りが漂う文房具店は貴重な存在として注目を集めているようだ。
◇中村文具店
東京都小金井市中町4-5-31
■減り続ける町の文房具店
全日本文具事務用品団体総連合の推計によると、25年前には全国に3万店前後あった文房具店が、現在では6000〜8000店にまで激減しているそうだ。書店やコンビニエンスストアなどでも文房具を販売するようになり、インターネットでも安く気軽に買えるようになったことから、昔ながらの文房具店は経営的に立ち行かなくなってきたようだ。
一方で、今回ご紹介した中村文具店のように “レトロな文具”という何かに特化した商品を扱うことで差別化を図り、ロイヤルカスタマーとリピーターを増やすことで人気を得るお店もある。
以前ご紹介した東京三鷹の「山田文具店」もそういったお店のひとつで、レトロだけれども輸入物も一部扱っているという、雑貨屋さんのようなオシャレな雰囲気を出して成功している例だと思う。通信販売などを組み合わせているので、店売り以外の売り上げを確保しているところがすごい。
町の小さな文具店で今でも頑張っているお店では、地元小中学校に文房具類を定期的に納めていたり、地元の方々の年賀状や挨拶状の印刷を仲介したりと、店舗販売以外の「定価商売商品」をしっかりと持っているお店がある。
大型書店や大型文具店、コンビニなどでは得られない温かさがあるのが町の文具店。 個人経営の書店が減少しているのと同じ現象が続いているが、子どもたちの集いの場としての町の文具店には、これからもしっかりと地域に根付いて続いて欲しいと思う。