「一冊入魂!」という言葉を掲げて、小さいからこそ出来る本づくりを行っている出版社がある。その小さな出版社が、仕事や人間関係の悩みを解決してくれる一冊を出版している。
■まさにお守りのごとく持ち歩きたい一冊
ミシマ社が発行しているのが「仕事のお守り」という一冊。その名のとおり、「お守り」として鞄に入れて持ち歩きたくなるような内容だ。
本は人を救う――毎日、いきいき働くために!「人生を温かく、豊かにする金言」集めました。心が折れそうなとき、本気で何かを始めたいとき、身体がガチガチなとき、ほがらかに生きていきたい…この本が効きます!
内田樹、山田ズーニー、平川克美、山口ミルコ、上阪徹、木村俊介、嶋浩一郎など仕事の達人たち、ビジネス書の腕利き書店員の方々、総勢16名による「行きづまったときに効く」エッセイも収録! !
「小さな総合出版社」としてジャンルを問わず発刊する出版社だからこそ出会えた著者の方々の言葉や、古今東西の名著から数々の金言を収録。
(「BOOK」データベースより)
この本には古今東西の著名人が語った言葉が紹介されていて、それにまつわるエピソードが書かれている。また、それ以外にも心に響く様々な書籍が紹介されていて、読んでいるだけで非常に心に響きます。
小さな出版社に編集長(社長)三島さんが書かれている文章も、気負いが無く穏やか。それでいてズバリと核心を突いてくる言葉ばかりで、ひとつひとつの章やエピソードを読みながら"うんうん"と頷いてしまった。
私はこの本の冒頭である第一章に登場する方で、在野の思想家 渡辺京二さんの言葉を読んでググッと引き込まれました。
“人間というものは、何も社会から必要とされるとか、社会のために役立つとか、そのために生きているんではない。(P17)”
“せっかく生んでもらった自分のこの生命というものを、生き延びさせていくということが、それ自体で、価値があることなんですね。(略)社会のためになんか役立たんでよろしゅうございます。たいだいこの人間の歴史に、いろんな災いをもたらしたやつは、社会に役立ってやろうと思ったやつが引き起こしたわけでございます。(P18)”
う〜ん、深い。渡辺先生がどうしてこのような境地に立たれるようになったのかということや、この言葉を通じてどのような気持ちで生きていけば良いのかということなども、しっかりと順序だてて書かれているのも素晴らしい。
本のタイトルは「仕事のお守り」となっているが、仕事ばかりではなく生きていくうえでとても大切なことが書かれており、ひとつひとつが胸に響く言葉であり解説だと感じた。
また、途中途中で登場する色々な方のショートエッセイも内容が深くて、そこに必ず紹介されている「行き詰りに効く一冊」という書籍紹介も、本好きとしてはたまらなく嬉しい紹介だなと感じた。
論より証拠。ぜひ書店で冒頭の部分だけでもパラパラッと見てほしい。そこで心に少しでも響く言葉が書いてあれば即購入するのがオススメだ。
■仕事も人間関係も考え方一つ
この本には心が軽くなるような、強くなるような言葉がたくさん並んでいて、それを読み進めていくだけで気分がスーッと晴れたり強くなったりする感覚を覚える。そういう意味でも鞄に入れておいて、時々パラパラッとめくるという読み方をしたいいっさつだ。
仕事をしているしていないに関わらず悩みというのはつきもので、ちょっと哲学的な言い方をすれば“人間は悩むために生きてるのではないか”と思う時もある。悩みが全くない状態というのは望むべき状態ではあるが、大なり小なり悩みというのはつきないものだなとも思う。
悩みの中で一番心に負担をかけるのは何と言っても「人間関係」。どういうわけかどこの職場に行っても必ず「悩みの種になる人物」というのが存在していて、ちょっとしたことだけど妙に癇(かん)にさわる人がいたり、理由も無く攻撃してくる人がいたりするということが不思議なくらい繰り返されている。
私も働き始めて数年経つまでは「どうしてなんだろう」と思い、そう思うこと自体がまたストレスになって気分が重くなっていた。しかし、よくよく考えてみるとそういうことは学生時代からもあったなと思う。
ただし、学生の頃は「相手にしない」ということができたが、社会人となるとなかなかそういう訳にもいかない。ましてや、職場の上司だったり先輩だったりするとさらに始末が悪い。こちらが気にしないようにしていても、相手には絡む理由がたくさんあるからだ。
そんな時にはどうすればよいか。残念ながらこれだという決定的な方法は無いが、今回ご紹介した本やアドラー心理学の本などを読み、自分の心を浄化するというのも一つの方法では無いだろうか。「浄化する」ということは嫌なことを洗い流すことなので、まずは自分の心の中をまっさらにするアプリのような一冊を読んでみるのも一つの方法だと思う。