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感動の実話「義男の空」(エアーダイブ)

  コミックというと娯楽物というイメージがあり、実際に楽しむための読み物でもある。子どもの頃は「漫画番長」を自称するほど漫画やコミックが好きだったが、昭和40年代に少年時代を過ごした私にとっては漫画やコミックは「買う」のではなく「借りる」というのが一般的だった。

 今でも見かけなくなったが、当時は私が生まれ育った九州の田舎にも「貸本屋」があって、子どものお小遣いでも借りられる値段で漫画や雑誌や小説が貸し出されていた。「貸本」の歴史は古くて今から300年以上前の江戸時代中期から始まったが、昭和40年代にはすでに激減しつつあったということなので、貸本屋に通ったのは私の世代が最後なのかもしれない。

 昔の大人は(今でもそうかもしれないが)、つまらない出来事や可笑しい出来事を指して「まるで漫画だね」と言っていた。私が働き始めた昭和50年代後半は職場でもそういった言い方を上司や先輩方がしていたが、漫画好きの私はその言葉を聞くたびに少々カチンと来ていたことを思い出す。

 「漫画がくだらないものの代名詞のようじゃないか」と一人憤慨したりしていたが、今でもその感覚は変わらない。漫画はけっしてくだらないものでない。

 文字を覚える前の子ども達にとっては漫画は楽しく文字を教えてくれる媒体であり、成長してからもその年代年代でいろいろと考えさせてくれるもとでもあった。もちろん、文字どおり「くだらない漫画」はいくつもあったが、同じように「くだらない小説」もあるのだから一概に漫画だから内容が無いと思ってしまうのは早計だ。 

義男の空 第1巻

 今回読んだコミック「義男の空」は、とても感動的な内容だった。コミックという形をとっているからこそ伝わる感動があるということを、このコミックは教えてくれると思う。

 北海道に実在する医師をモデルとしたこのコミックは、子を思う親の気持ちや、親を思う子の気持ちというものが表現されていて、読み進めるうちに目頭が熱くなってくる部分もある。

 実在の人物をモデルとした作品の中には派手な展開や力みすぎた表現のものも時々見かけるが、この作品はある意味では淡々と事実をコミックという形で表現しているため、読んでいて肩が凝らないし白けるということもない。それだけ「事実」には重みがあるということだろうと思うし、「事実を淡々と伝える」ということの大切さも感じることができた。

 コミックの最後の方にはモデルとなった医師と著者との対談も掲載されていて、他のコミックとは一線を画しているような気がした。出版社は札幌にある会社だが、地方に腰を据えているだからこそこういった思い切った物語を出版できるのかもしれない。

 「義男の空」は「元漫画番長」の私としては読み続けたい一冊となった。

義男の空 第1巻

義男の空 第1巻

 

著者からのコメント

 漫画「義男の空」発刊にあたって 「高橋義男」という、実在する一人の医師がいます。 彼は現在、北海道にて脳神経外科医として活躍し、今も多くの子供達を 救いつづけています。 医師としてのその功績や歴史、そしてたくさんの患者に慕われる 人間としての魅力に惹かれ、彼の漫画を描こうと思い立ちました。

 エアーダイブは、漫画という媒体を通じて 感動を贈りたいという志を抱き、日々技術の研鑚に励んでいます。 今回、高橋先生の漫画を描くことで、 例えば、読み終えた子供達が「こんな人間になりたい」と思うような、 例えば、医師を目指す方が「こんな医師になりたい」と思うような、 心に残る何かを伝えられたらなら、 創り手としてこんなに嬉しいことはありません。

 創り手の創造する喜びが、読み手の満足につながり、 そこからさらに社会へプラスの波紋を広げていくー 大きな喜びの循環を、みなで作り出してゆきたい。 そのような願いを込めて、「義男の空」の発刊を決定致しました。 この物語を一人でも多くの人に伝えたい。