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今回も痛快なストーリー展開「銀翼のイカロス」(池井戸 潤)

 「人の悩みのすべては人間関係である」と説いたのは心理学の巨頭アドラーの言葉だが、よくよく考えてみるとなるほどなと頷いてしまう。仕事をしていようがしてまいが、職場であろうが学校であろうが家庭であろうが、悩みを突き詰めていくと人間関係に行きあたってしまうという人は多いのでないだろうか。

 私も社会人生活が30年以上になるが、思い返すと根の深い悩みというのはすべて人間関係だった。もちろん、仕事自体がうまくいかなくて悩んだことも多々あるし、若いころは給料日前になるとすっからかんになって悩んだりもした。

 しかし、そういった悩みというのはある意味では一過性のものだし、自分の努力や計画でうまく回避することができることも多々ある。

 人間関係だけは自分がどう頑張っていても回避できない場面があるが、そんな時にズバッと言いたいことを言ってグイグイと切り抜けていく人には強く惹かれてしまう。だからこそ、そんなすごい主人公が登場する小説を読むと、そこに自分自身を投影してグイグイと引き込まれてしまう。

 その昔一大ブームとなった映画にブルースリーの「燃えよドラゴン」があるが、映画を観終わると急に強くなったような気になって、ついつい「アチャッ!」とか言いながら柱を叩いてこぶしを痛めたことがあるのは私だけではないと思う。

 「その気になる」ということは映画にしろ小説にしろ、印象が強烈であればあるほど個人の行動に影響を与えるものだ。

銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

 

  テレビドラマ「半沢直樹」が一気にブレイクしたのも、そういった「その気になった」人が多かったからだろう。

 池井戸さんの作品はデビュー作からすべて読んでいるが、テレビドラマの原作となった「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」は一連の池井戸作品の中では決して突出したものではない。

 もちろん銀行を舞台とした魑魅魍魎の世界には引き込まれてしまうが、個人的には直木賞を受賞した下町の工場が舞台の「下町ロケット」や、トップセールスマンの苦悩を描いた「七つの会議」など、”お金を借りる側”の視点で書かれた物語のほうが好きだ。

 それでも半沢直樹シリーズが人気となったのは、半沢直樹役の堺雅人さんや金融庁黒崎駿一役の片岡愛之助さんの演技が素晴らしかったからにほかならない。銀行の役員すら呼び捨てにする半沢直樹の姿に、胸のすく思いをしたサラリーマンは多いのではないだろうか。

 シリーズ最新作となる「銀翼のイカロス」でも半沢直樹の痛快ぶりは健在で、読者が求めている半沢直樹像以上のパワーと行動力で難題を乗り越えて行く。また、金融庁黒崎駿一の立ち位置も今までとは少々異なっていて、違う意味でのキーマンとして描かれているのも面白い。

 読み終わってから思わず目つきを鋭くして勇ましい気分になってしまうのは、半沢直樹が私にとってはブルース・リーと同位置に据え置かれてしまったからかもしれない。

半沢直樹シリーズ第4弾、今度の相手は巨大権力! 新たな敵にも倍返し! ! 頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、 500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。 政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い ――プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?(Amazon「内容紹介」より)