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不完全燃焼の自分に効く一冊「燃ゆるとき」(高杉良)

 仕事をしていて何となく不完全燃焼になる時がある。仕事が行き詰っている訳でもなく、やるべきことや課題は明確になっている。それでも燃えない。いや、燃えているつもりなんだけれども、まさに不完全燃焼な感じがいなめない。

 そんな時に読んで、気持ちをググッと持ち上げてくれた一冊がある。 

■東洋水産社長の熱い想いを感じる一冊

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 今日ご紹介するのは高杉良さんの「燃ゆるとき」という一冊。「マルちゃん」マークでお馴染みの総合食品会社が舞台の物語だが、激動の時代を生き抜いた誠実な創業者の姿が熱く描かれている。

内容(「BOOK」データベースより)

わずか四パーセントの生存率といわれるノモンハンの激戦を生き抜いた森和夫は、「どんな苦労も苦労のうちに入らない」と、築地魚市場の片隅に従業員四人で起業した。商社の横暴、ライバル企業との特許抗争、米国進出の苦難を乗り越え、東洋水産は、「マルちゃん」のブランドと「赤いきつね」のCMで知られる大企業へと育つ。「運命共同体」を経営理念に、創業以来社員と共に歩んだ経営者の情熱と成功を実名で描く、経済小説の傑作。

  会社名や商品名だけではなく、創業者であり長く社長を務められた森和夫氏も実名で書かれている。それだけに、読んでいて胸に迫ってくるものは大きい。

 小説だから多少は脚色が施されているかとは思うが、事実を踏まえた小説は訴えかけてくるものが大きい。創業時は私が生まれる前のことだが、まるで自分がその時代にいたような錯覚に陥るのは、筆者の文章力の高さゆえんであろう。

 ただし、私が生まれたのは戦後の東京オリンピックが開催される数年前なので、物語に出てくる街の風景や会社の雰囲気などは、幼いころの記憶としてほのかに残っている昭和中期の風景と重なる。それもあって、この小説に感情移入が行いやすいのかもしれない。 

  それにしても、戦後の混乱期から一代で優良大企業を興した人物をモデルとして書かれた本書は、読み進めていくうちにひとつの経営哲学のようなものが見えてくる。それは、近年特に推奨されるようになった従業員重視の経営であり、大企業の圧力に屈しない強い経営者の姿でもある。

 得てしてこういった本が世の中に出ると、モデルとなっている方について「本当はこんな立派な人ではなかった」という話が出てくる時がある。それはもしかしたら事実かもしれないが、伝記ではなく小説ならば不要な情報だと思う。他人に対する評価は千差万別であるからだ。

 年齢も違い経歴はさらに自分とは大違いの主人公だが、不完全燃焼気味だった心に新鮮な酸素を送り込んでくれて、完全燃焼に向けての心の中の活力になってくれた。

 この本をこのタイミングで読めて良かったと、心からそう感じた一冊だった。

燃ゆるとき (角川文庫)

燃ゆるとき (角川文庫)

 

■心に効くサプリメントのような物語

 高杉良さんの作品には、今までもたくさんの元気をいただいた。その時々の自分の働きぶりや抱えている課題、目指している方向など、迷いが出た時には不思議と高杉作品を選んでいるような気がする。

 高杉良さんの作品は実話を基にした話が多く、小説だから多少脚色はしているだろうが、事実が訴えかけてくる迫力は著者の力量の高さゆえんであろう。それだけ心に訴えてくる作品が多い。

 本好きでほぼ毎日書店を覗いている私は、その時々の気分というかモチベーションの度合いによって、無意識のうちに自分の気持ちに則した本を選んでいるように思える。

 気持ちが殺伐としている時には心和む一冊を、不完全燃焼気味の時には気持ちが昂る一冊を、そして気持ちが沈んでいる時には軽快なテンポの一冊を選ぶ。ほかの方々もそうなのだろうか。

 私にとって書籍は心によく効くサプリメントのようなもの。心が欲しているサプリメントを無意識のうちに選んでいるというのも、本好きの私としては誇らしくて自分をほめてあげたい。