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哀しくて切なくて胸が暖かくなる物語「つばさものがたり」(雫井脩介)

 感動する物語に出会うと、同じ作家さんの物語を続けて読むというのは良くある。今回も同じ作家さんの物語を続けて読んで、前作以上に感動した一冊に出会うことが出来た。

■思わず目頭を熱くした一冊

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  今日ご紹介するのは雫井脩介さんの「つばさものがたり」という一冊。病魔と闘いながらも、必死で自分の人生を全うしようとする若きパティシエールの小麦。そして、天使が見えるがために周囲から孤立する甥っ子の叶夢とが軸となった物語。

 生きることの難しさと家族の愛情を描いた物語は、愛情にあふれたとても素敵な一冊だった。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
パティシエールの君川小麦は、自身の身体に重い秘密を抱えたまま、故郷・北伊豆で家族とケーキ屋を開いた。しかし、甥の叶夢からは「ここは流行らないよ」と謎の一言。その通り、店は瞬く間に行き詰まってしまう。力尽きた彼女に新たな勇気を吹きこんだのは、叶夢と、彼にしか見えない天使の“レイ”だった…。小麦のひたむきな再起を見届けたとき、読み手の心にも“見えない翼”が舞い降りる。感涙必至の家族小説。

 「家族小説」と銘打たれたこの物語は、病魔に襲われた若きパティシエールの小麦と、小麦の母、兄、義姉、甥っ子との心の触れ合いを描いた作品。特に甥っ子の叶夢は物語の中で重要な鍵を握っていて、叶夢にしか見えない天使"レイ”が物語の場面場面で非常に重要な役割を果たしてくれる。

 叶夢にしか見えない天使が”実際に存在する”と読者が認めざるをない展開が続き、読者がその存在を認めた時点から、この物語が一気に輝きだすというのが素晴らしいしかけとなっている。

 小麦のひたむきさ、叶夢の純粋さ、そして周囲の暖かさ。最後のページをめくった時に、哀しくて切ない気持ちになるものの、どこか心の底の方が温かくなる感動の一冊だった。

 雫井脩介さんの作品には「クローズド・ノート」で初めて出会ったが、心の奥の方が温かくなるというのは同じで、読後の幸福感と言うか満足感が素晴らしい。雫井脩介さんの他の作品をもう少し読み込んでみようかなと思う。

クローズド・ノート (角川文庫)

クローズド・ノート (角川文庫)