最近書店の平台で見かけることが多くなった一冊がありました。ほぼ毎日書店を覗いている私ですが、表紙と題名に惹かれて買ってみた一冊は、想像以上に素敵な物語だったんです。
■優しくて切なくて温かい物語
今日ご紹介するのは雫井脩介さんのクローズド・ノートという一冊。優しい雰囲気で物語が進みながらも、やがて切なくて哀しくて、でも温かい気持ちになることができる一冊です。
【内容情報】(「BOOK」データベースより) 堀井香恵は、文具店でのアルバイトと音楽サークルの活動に勤しむ、ごく普通の大学生だ。友人との関係も良好、アルバイトにもやりがいを感じてはいるが、何か物足りない思いを抱えたまま日々を過ごしている。そんななか、自室のクローゼットで、前の住人が置き忘れたと思しきノートを見つける。興味本位でそのノートを手にする香恵。閉じられたノートが開かれたとき、彼女の平凡な日常は大きく変わりはじめるのだった。
物語の主人公は教育大に通う女子大生の香恵。彼女の部屋のクローゼットの中には、たくさんのメッセージカードと一冊のノートが残されていました。
主人公の香恵は皆から「天然」と呼ばれるフワッとした性格の持ち主。何気なくノートを読んだ時からノートの持ち主に魅力されてしまいます。ノートの持ち主は小学校の若い女性教師で、日々苦労をしながらも前向きな日々を過ごしていた様子が窺われます。
この物語は前半で登場人物の性格や考え方などを丹念に描きながら、中盤からはクローゼットに残されたノートの内容が絡みながらラストまで進んでいきます。
基本的には恋愛小説でありながら、推理を働かせながら読んでいくという要素も併せ持った一冊。
私は物語の中盤を過ぎた辺りで物語の展開が読めて来ましたが、それでも、いやそれだからこそ更に熱心に読み入ってしまいました。
爽やかで、切なくて、でも心が暖かくなる一冊でした。心の疲れを取りたい方にはオススメの一冊ですよ。
■この本を読むと万年筆が欲しくなる
私が大の文房具好きだからかもしれませんが、この本を読んで無性に万年筆が欲しくなりました。というのも、この物語の中には万年筆を置く文房具店が登場するからなんです。
主人公の香恵がバイトをしているのが街の文房具店で、お店のご主人は万年筆にひとかたならぬ愛情を持った職人堅気の人。オリジナルの万年筆を作って販売するぐらい、万年筆にこだわりを持っています。
物語の序盤でこの文房具店の万年筆売り場が舞台となって、次々と万年筆が紹介される場面が出てきます。それを読んでいるだけで「万年筆って良いな〜」と思えてきます。
物語の中でも万年筆はとても重要な意味を持っていて、物語の最後の最後までこの文房具店で売られた万年筆が登場してきます。
文房具の中でも万年筆は王様(だと思う)。文房具好きの人には、違う意味で楽しめる一冊かもしれません。