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[P]恐ろしいけどラストは温かい一冊「ユリゴコロ」(沼田まほかる)

 店頭の平台に乗っているのに、なかなか読むことの無い一冊がありました。殺人事件がからむ内容だったので敬遠していましたが、思い切って読んでみたらラストは意外にも温かい気持ちになることのできる一冊でした。

■4冊のノートに綴られた告白文

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 今日ご紹介するのは沼田まほかるさんの書かれた「ユリゴコロ」という一冊。主人公の若者が自宅の押し入れで4冊のノートを見つけて、その恐ろしい内容に引き込まれていくところから物語が始まります。

ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのかー。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!(Booksデータベースより)

 主人公はドッグランを備えた喫茶店を経営している若者。幼い頃に高熱で入院し自宅に戻った時に、母親が替わっていたと思い込んだ記憶の持ち主。病で余命いくばくもない父親を自宅に見舞った際に、留守中の父親の書斎にある押し入れから見たことの無い古いノート4冊を見つけます。

 内容な殺人願望と実際の殺人の様子を書いた告白文。これは真実なのか、誰が書いたのか。ノートを読み進めるうちに謎は深まり、自分の幼い頃の記憶をたどりながら真実に近づこうとします。

 そして迎える驚愕のラスト。それは人の心の中にある哀しさと複雑さと、そしてとても深い愛情を感じさせるものでした。

 この作品を読んで、家族のあり方や愛情の表し方というのはさまざまで、家族を形づくっているものの脆さと強さを改めて感じました。

 決して一般的ではない家庭環境を描きながらも、もしかしたら似たような状況というのはどこにでもあるのではないかと思わせる内容は、著者の文章力の高さと設定の巧みさによるものなんだろうなと思います。

 一気に読んでしまうほど引き込まれる一冊でした。

■「ユリゴコロ」

著者:沼田まほかる

発行:双葉文庫

発売日:2014年1月

サイズ:文庫

ページ数:330P