物語はストーリーで読ませたり文体で読ませたりと、作者によってその手法は様々ですが、一冊の本の中でメインストーリーとサブストーリーとが前後に綴られた一冊に出会いました。
読み方に戸惑いながらも徐々に引き込まれてしまい、あっという間に一気読みしてしまうぐらい面白い一冊だったんですよ。
■本の前半と後半を交互に開きながら読み進める物語
今日ご紹介するのは湊かなえさんの「白ゆき姫殺人事件」という一冊。インタビューとSNSでの会話と週刊誌の記事で物語が進んでいくという、今までに無い読み方をする非常に斬新な手法の一冊でした。
“化粧品会社の美人社員が殺害された。身体を数十カ所刺されたうえで灯油をかけられて燃やされるという、非常に残忍な手口の殺人。容疑者は同僚なのか?それとも他の人物なのか?美人で心優しいと評判だった被害者と、被害者の同期で呪いの力を持っていると言われる女性との間に何があったのか。ネットで飛び交うさまざまな憶測や心ない誹謗中傷、そして美人社員に関する意外な事実、、、いや事実のような告発。インタビューを元にした無責任な週刊誌の報道記事と、その記事に翻弄されながらも興味本位で語る人々。噂話は真実の話となって徐々に広がっていくが、、、”
湊かなえさんと言えば「夜の観覧車」や「花の鎖」などで、巧みなストーリー展開と伏線で最後にあっと言わせる物語を書かれる方です。また、「贖罪」や「告白」など人の心の奥底に眠る闇を描き、読むものを心の底から恐れさせる作品なども書かれています。
今回ご紹介したこの一冊は、今まで読んだ作品とは異なり、事件の謎解きもさることながら人の噂の及ぼす影響なども巧みに描かれた作品です。
特徴的なのが本の後半3分の1ほどがSNSや週刊誌記事などの「参考資料」となっているところ。物語の区切りになると「巻末資料へ」という案内が書かれており、該当のページを読むことでさらにストーリーが膨らむというつくりになっています。
人々のインタビューが一人歩きしてSNSで展開されていたり、話されたことが意地悪な目線で週刊誌の記事になっていたりと、ストーリーの本筋とはまた違った面白さで展開していきます。
物語の結末もさることながら、こういった手法が目新しくてグイグイと引き込まれてしまいました。
今春には映画化されて公開される予定のこの一冊。かなりオススメの一冊ですよ。ぜひ。