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〔P〕ほのぼのとした連作短編「ハルさん」(藤野恵美)

 年末年始は文庫化される本が多くなるような気がしますが、その分書店の平台を見て歩くのが楽しくなる時期でもあります。今回も書店の平台で見かけて手に取った一冊がとても心温まる一冊でした。

ハルさん (創元推理文庫)

 今日ご紹介するのは、藤野恵美さんが書かれた「ハルさん」という一冊。ほのぼのとした日常の中にある、ちょっとしたミステリーが微笑ましい物語です。

(瑠璃子さん…今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。まさか、この僕が「花嫁の父」になるなんて…)結婚式の日、ハルさんは思い出す、娘の成長を柔らかく彩った五つの謎を。心底困り果てたハルさんのためにいつも謎を解き明かしてくれるのは、天国にいる奥さんの瑠璃子さんだったー児童文学の気鋭が、頼りない人形作家の父と、日々成長する娘の姿を優しく綴った快作。(「BOOK」データベースより)

 ハルさんは心優しい人形作家。妻の留璃子をはやくに亡くし、一人で育ててきた娘ふうちゃんが結婚する日から物語は始まります。式場に向かうハルさんは娘との懐かしい日々を思い浮かべますが、その思い出ひとつひとつが短編となって綴られています。

 幼稚園の頃に友達のお弁当箱から卵焼きが消えてしまった事件、小学生になったふうちゃんが夏休みに突如としていなくなってしまった事件、中学生になって帰宅したふうちゃんのスポーツウェアに落書きがされていた事件など、いろいろな事件にハルさんは悩まされます。

 その度に、亡くなった妻の留璃子さんハルさんの頭の中で話しかけてきて、事件は意外な結末を迎えて解決されて行くことになります。

 事件と言っても普段の生活の中で起こるちょっとしたハプニング程度なのですが、娘を持つ心優しい父親の心の動きが、とても温かく描かれている短編ばかりなんです。

 思い出を回想していく形で展開するこの物語は、最後の結婚式の場面でふうちゃんが結婚に至るまでの経緯が綴られていて、それが父親に対する愛情という形で描かれています。

 特にハラハラするような展開があるわけではなく、ずしんと心に重くのしかかるエピソードがあるわけではないのですが、読み終わったときにほんわかと温かいものが心に流れる一冊でした。

 児童物で著名な藤野恵子さんですが、その温かい文書はそのまま読者の心にしみてくるような感じがします。素敵な一冊ですよ。オススメです。 

ハルさん (創元推理文庫)

ハルさん (創元推理文庫)