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痛快な企業小説「シャイン!」(原 宏一)

 働くというのはどういうことなのか。働いている方は時々そういうことを考えるのではないかと思いますが、気楽に読むことが出来ながらも、いろいろと考えさせられる素敵な一冊に出会いました。

■食品会社の悪さ加減を暴く痛快な物語

シャイン! (集英社文庫)

 今日ご紹介するのは原宏一さんの「シャイン! 」という一冊。中小の食品会社を舞台とした企業小説の形態を取りながら、働くことの意味を教えてくれる痛快な物語です。

“ワンマン会社の鴨之木製麺工業で、派遣社員として働く加奈子。ある日、田布勢部長からセクハラまがいの仕事を言いつけられたことを愚痴ったところ、社内の派閥争いに思わぬ影響が生じてー。麺の開発部に飛ばされたデザイナー、工場でフォークリフトを操る元走り屋、内部告発を試みる経理部OLなど、不祥事に揺れる中堅企業で奮闘する社員たちを描いた長編小説。(「BOOK」データベースより)”

 本の裏書きなどには「長編小説」と書かれていますが、派遣社員や工場の中間管理職などが主人公となった短編が綴られていて、それらがつながり合って一つの物語となっている連作短編という方が正解かもしれません。

 物語の舞台は、家庭的な会社運営を行い、そこそこのヒット商品を出していた中小食品会社の鴨之木製麺工業。ここの麺しか使わないラーメン店があったりと、それなりに誠意を持って事業運営を行ってきた会社です。

 ところが、会社が大きくなってくるに連れて営業部門の発言力が増してきて、売上げを上げることと社内での発言力を増すことに力を注ぐ管理職や社員が出てくるようになります。

 家庭的で良心的な会社運営を行うことで大きくなってきた鴨之木製麺工業。同族会社の良い部分が徐々に企業としての体裁を取り始めた頃に、顧客のことを考えることから社内の勢力争いへと力の入れどころが替わってきます。

 その中でも、物語の主人公達は「これで良いのだろうか」という疑問を持ちながら小さな抵抗を行い、それが徐々に徐々に会社の運営に影響を与えるようになっていきます。

 そして迎える大きな動き。ひとつひとつの物語がつながって、物語全体が大きく転換して行くことになります。とはいっても、シリアスな内容ではなく、時にはクスッと笑えるような出来事などもたくさん盛り込まれていて、気軽に読み進めて行ける一冊です。

 原宏一さんの書かれる物語には「働くことの意味」を考えさせてくれるものが多いのですが、今回読んだ「シャイン!」も正しい倫理観で働くことの大切さを教えてくれます。

 こういう物語というのは読む年代によって捉え方が異なると思いますが、大人だけではなく学生や子どもにも読んで欲しい一冊だなと思いました。

 オススメですよ。ぜひぜひ!

シャイン! (集英社文庫)

シャイン! (集英社文庫)